研究課題/領域番号 |
24580458
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西村 亮平 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80172708)
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キーワード | 再生医療 / 骨髄間葉系幹細胞 / 脂肪組織由来間葉系幹細胞 / 脱分化脂肪細胞 |
研究概要 |
昨年度はイヌ脂肪組織から得た成熟脂肪細胞を天井培養することで、脱分化脂肪細胞を安定的に作成する培養系の確立が可能となったが、今年度はさらに、骨髄液中に含まれる成熟脂肪細胞を天井培養することにより、脱分化脂肪細胞の作製を試みた。結果、骨髄中成熟脂肪細胞には由来は不明であるが、多くの小型細胞が接着しており、天井培養中にその細胞が増殖し、脱分化脂肪細胞とは異なる細胞が得られた。増殖した細胞をさらに骨・軟骨・脂肪へ分化させたところ、それぞれの分化能を示し、間葉系幹細胞であると考えられた。さらにこの細胞は定法通り得られる骨髄間葉系幹細胞(Bone Marrow Mesenchymal Stem Cell)と比較し、有意に高い増殖能を示したことから、短期間に多数の細胞数を得ることができ、再生医療への利用に適していると考えられた。そこで、当初は脂肪組織から得られたDFATを研究に用いる予定であったが、骨髄中に高い能力をもつ新たな再生医療のセルソースを見出したことから、この細胞を骨髄脂肪細胞周囲細胞(Bone Marrow peri-adiopocyte cell;BM-PAC)とし、25年度はBMSCとBM-PACの性状比較を新たな目標に設置した。現在のところ、分化能比較および細胞表明抗原による分類を遂行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は脂肪組織中の成熟脂肪細胞を天井培養して得られた脱分化脂肪細胞を用いて研究を遂行する予定であったが、骨髄脂肪細胞から新たな再生医療のセルソースとなり得る細胞を見出した。他の動物を含め、この細胞についての過去の報告は少なく、より新しい知見が得られると期待し、研究材料の変更を行ったが、研究の内容はほぼ同様であり、進展状況はおおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
26年度はBM-PACについて再生医療のセルソースとしての有用性を、さらに液性因子分泌能から探索する。他の実験において、当研究室で作製したイヌのBMSCや脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADMSC)は上皮系細胞と相互作用し、HGFやEGFなど、細胞の増殖・生存あるいは組織修復に有用な液性因子を分泌する可能性を見出しており、BM-PACの炎症環境下での、これらの因子の発現変化について検討し、組織修復能力を明らかにする予定である。 また、特に脊髄再生への応用を目的とし、げっ歯類の脊髄損傷モデルへの投与において、液性因子分泌能を発揮するかを検討し、将来の臨床応用への基礎的検討を行う予定である。
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