研究概要 |
MGMTは抗癌剤によってアルキル化されたグアニンを修復するDNA修復酵素であり,これまで我々の研究室で行われた犬リンパ腫細胞株を用いた研究においても抗癌剤ロムスチン耐性へのMGMT発現の関与が示唆されている。また, 人医領域ではMGMT Exon 1近傍のCpGアイランドのメチル化によりMGMT遺伝子発現が抑制されていると報告されている。本年度は犬リンパ腫に関わるエピジェネティック異常として,犬MGMT遺伝子のメチル化に着目し,メチル化阻害薬添加の有無によるMGMT遺伝子のmRNA発現量の比較を行うとともに,CpGアイランドのメチル化状態を解析した。 犬リンパ腫細胞株と健常犬PBMCを用い, メチル化阻害薬添加によるMGMT遺伝子mRNA発現量への影響を検討した。その結果, メチル化阻害薬非添加状態ではMGMT mRNA発現が認められなかった一部の細胞株でメチル化阻害薬添加によりMGMT遺伝子発現が認められるようになった。次にMGMT遺伝子Exon 1の上流約10,000bp~下流約7,000bpを対象として CpGアイランドの検索を行ったところ, Exon 1の上流約10,000bpの領域に4つのCpGアイランドが存在することが明らかとなった。さらにこれらのCpGアイランドについてメチル化解析を行ったが, いずれの領域においてもCpGのメチル化によるMGMT遺伝子の発現抑制という仮説との一致は認められなかった。 以上の結果から本研究では犬リンパ系腫瘍細胞株においてMGMT遺伝子の発現がメチル化により抑制されている可能性が強く示唆された。しかし, 今回解析した犬MGMT遺伝子のExon 1の上流約10,000bp~下流約7,000bpの領域には犬MGMT遺伝子の発現調節に関わるメチル化領域が存在する可能性は低いものと考えられた。以上の結果は現在,投稿準備中である。
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