近年、交感神経は全身的にレニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系を調節している可能性が示唆されている。しかし、心臓局所における交感神経受容体を介したRAA系の調節機序は未だ未解明である。本研究では、ラットの心臓・線維芽細胞において交感神経受容体を介した心筋線維化に対するアルドステロン受容体の関わりを解析した。 平成24・25年度:ラットの左心室におけるアルドステロン合成酵素(CYP11-B2)ならびにレニンの遺伝子発現は認められず、ミネラルコルチコイド受容体の遺伝子発現が確認された。同様に、心臓線維芽細胞においてもミネラルコルチコイド受容体の遺伝子発現のみが確認された。in vivo研究において、交感神経受容体作動薬(イソプロテレノール)を投与した心不全モデルラットでは左心室の心筋線維化が亢進しており、I型コラーゲンmRNAおよび蛋白の発現が増加していた。これらの反応はアルドステロン受容体阻害薬(エプレレノン)の併用によって抑制された。さらに、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK1/2)は、イソプロテレノールを投与した左心室でリン酸化されており、エプレレノンはERK1/2のリン酸化を抑制していた。一方、いずれの群においてもCYP11-B2 mRNAの発現は認められなかった。 平成26年度:交感神経受容体刺激を介したI型コラーゲンの産生に対するアルドステロン受容体の役割をin vitro研究によって解析した。イソプロテレノールを暴露した心臓線維芽細胞ではI型コラーゲンおよびリン酸化ERK1/2の発現量が増加していたが、エプレレノンはこれらの反応を抑制した。 これらの結果は、ラット左心室および線維芽細胞において交感神経受容体刺激を介したI型コラーゲン 産生にはアルドステロン受容体が関与していることを示唆している。
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