研究課題/領域番号 |
24580465
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
枝村 一弥 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80366624)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生医療 / 犬 / 骨髄間質細胞 / 軟骨 / 国際情報交換 / 韓国 |
研究概要 |
今年度は、犬の軟骨の幹細胞源として、骨髄間質細胞(BMSC)、滑膜細胞由来間質細胞(SDSC)、膝蓋下脂肪体から分離した脱分化脂肪細胞(DFAT)または脂肪組織由来間質細胞(ADSC)のいずれが最も有用かを検討した。 臨床上健康と認めた犬の上腕骨から骨髄を抜去しBMSCを分離した。同一犬から滑膜と膝蓋下脂肪体を採材した後にコラゲナーゼで修理し、得られた細胞を静置培養することによりSDSCとADSCを、天井培養することによってDFATを分離した。各群ともに10 日間培養し、形態や増殖能を検討した。その後、各群の軟骨分化能を検討し、形成された細胞塊の大きさとトルイジン青染色の染色性を検討した。 BMSC群、SDSC群、ADSC群のいずれも、線維芽細胞様の形態を呈しながら比較的均一に増殖していった。DFAT群においては、培養翌日から球形細胞が培養フラスコの天井へと付着し、次第に線維芽細胞様の形態へと変化していった。培養10日後に得られた細胞数は、ADSC群が最も多い傾向が認められた。軟骨へと分化誘導したところ、ADSC群が最も大きい軟骨様細胞塊が形成された。いずれの軟骨様細胞塊も、トルイジン青染色で異染色性を示した。 本研究においては、犬のSDSC、DFAT、ADSCのいずれも培養および増殖が可能であった。SDSC、DFAT、ADSCの形態はBMSCときわめて類似しており、これらの細胞はBMSCより増殖が旺盛であった。これらの細胞の中で、ADSC群が最も得られた細胞数が多く、また軟骨へと分化誘導した時に最も高率でかつ大きい軟骨様球形細胞塊を形成した。これらの結果から、犬の軟骨再生のための幹細胞としてADSCが最も優れている可能性が示唆された。 本研究の内容は欧州獣医外科学会で発表し、Best Presentation Awardを頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では、申請の段階で、「犬骨髄間質細胞の軟骨への分化誘導条件の検討」と「再生軟骨の培養環境に関する検討」を行う予定であった。前述の実績概要にもあるように、前者の検討については順調に行うことができ結果も公表することができたが、後者についてはやや進捗が遅れている。しかし、独立行政法人物質材料研究機構や韓国の建国大学との情報交換も積極的に行い、一部の実験は既に開始している。次年度の早期には、これらの結果が出ることが予想され、研究を達成できる見通しが十分に立っている。次年度では、下記の研究計画も同時に行っていく予定であり、それらが達成できれば当初の研究計画が達成できる。
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今後の研究の推進方策 |
①犬骨髄間質細胞の軟骨細胞への分化に対する各種scaffoldの影響および定着能に関する検討 軟骨は、プロテオグリカンなどの細胞外基質と軟骨細胞で構成されているが、他の臓器と異なり細胞の密度は疎で、そのほとんどが細胞外基質である。したがって、関節軟骨を完全に再生させるためには、母床となるscaffoldの選択は極めて重要である。また、2次元培養では理想的な硝子軟骨を作成することはできないので、ゲルまたは担体を用いた3次元培養を行う必要がある。Scaffoldには、ヒトで検討されている3%アテロコラーゲン(低抗原性typeIコラーゲン)を、その他に本研究では新規素材である生体由来物質を含まないメビオールジェル、温度反応性ゼラチン、ハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体を用い、本年度に確立した方法に準じ、骨髄間質細胞を培養および軟骨に分化させ、細胞の定着能や得られた細胞塊の大きさを比較する。一部は、現在、独立法人物質材料研究機構と共同で開発しているscaffoldを用いて検討を行う。培養軟骨作成後に組織学的検索を行い、軟骨への分化効率を検討する。 ②人工培養軟骨を移植するための関節鏡視下手術法の確立 関節鏡視下手術は、人医学領域ではよく行われる手法であるが、わが国の獣医学領域では未だ確立された方法とは言い難い。本検討は、申請者の施設で保有している中型の雑種犬の死体の肢を用いて行うため、動物実験倫理の観点からは極めて受け入れやすい方法である。膝関節に軟骨の全層欠損部を作成する。関節鏡を膝関節内に挿入し、理想的な関節内手術器具の操作用の孔の部位を検討する。次いで、様々な大きさ、厚さ、硬さの培養人工軟骨を作成し、移植時に最も適した形状を決定する。申請者の所属する日本大学付属家畜病院には、関節鏡システムが常備されており、現有の設備で十分に検討が可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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