研究課題/領域番号 |
24580465
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
枝村 一弥 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80366624)
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キーワード | 軟骨再生 / 犬 / scaffold / 関節鏡 / 骨髄間質細胞 / 韓国 / 国際情報交換 |
研究概要 |
今年度は、まず犬の骨髄間質細胞(BMSCs)の軟骨分化に最適なscaffoldを検討した。今回の検討では、scaffoldとして、低抗原性typeIコラーゲンである3%アテロコラーゲン、新規素材で生体由来物質を含まないメビオールジェル、温度反応性ゼラチンを用いた。犬BMSCsを培養および軟骨へ分化誘導させた後に、細胞の定着能や得られた細胞塊の大きさを比較した。3%アテロコラーゲン群では、細胞の生存率がきわめて低かった。温度反応性ゼラチン群では、形態が崩れ組織塊を得ることができなかった。メビオールジェル群は、得られた軟骨様組織が最も大きくかつ細胞の生存生が最も優れていた。さらに、メビオールジェル群で得られた組織は、トルイジンブルー染色で異染性を示した。これらの検討結果から、犬BMSCsの軟骨分化にとってメビオールジェルが最も優れたscaffoldであることが示唆された。 次いで、犬の膝関節を用いた軟骨欠損モデルにおける軟骨再生能を関節鏡視下で評価する方法を検討した。犬の膝関節の軟骨全層欠損モデルを用い、理想的な関節内手術器具の操作用の孔の部位を検討した。全身麻酔下で膝関節の関節鏡検査を行い、理想的な軟骨欠損の作成部位や操作孔の作成部位そして記録方法を確立した。さらに、超音波検査やMRI検査(T1WI、T2※、T2WI、STIR)を同時に行い、これらの撮像条件についても検討しより臨床的な再生軟骨の評価法を確立した。 上記の研究成果の一部は、平成26年3月に行われた第13回日本再生医療学会にて公表した。また、本研究助成金の一部で行われた研究成果は、第156回日本獣医学会、International Society for Stem Cell Research 11th Annual Meeting、第65回細胞生物学会等で発表した。また、今回の研究内容で韓国・建国大学とMOUを締結した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は2つの実験を行った。まず、犬の骨髄間質細胞(BMSCs)の軟骨分化に最適なscaffoldの検討を行い、メビオールジェルが最も優れたscaffoldであることが明らかとなった。次いで、犬の膝関節を用いた軟骨欠損モデルにおける軟骨再生能を関節鏡視下で評価する方法を検討した。今回の検討にて、犬における理想的な軟骨欠損作成部位や操作孔作成部位そして記録方法を確立しただけでなく、超音波検査やMRI検査の撮像条件も検討することができた。これらは、次年度以降の研究につながる成果であり、当初の実験計画と照らし合わせると大方計画通りに遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
①軟骨損傷実験モデルにおける移植効果の検討 犬の膝関節に軟骨損傷モデルを作成した後に、GFPでラベルした犬骨髄間質細胞を用いた種々の人工培養軟骨を移植し、その効果や硝子軟骨への再生能を比較することを目的とする。動物に対する侵襲を最小限に抑える目的で、荷重部位に軟骨半層欠損を作成する。Scaffoldは、本年度の研究成果から得られた最も優れていた材質を用いる。軟骨欠損部位に、scaffoldのみを移植する群、未分化の骨髄間質細胞を用いたscaffoldを移植する群、骨髄間質細胞を軟骨に分化させた培養人工軟骨を移植する群の3群を設定し、3群間の治療成績を比較する。移植後は、歩様の状態、体重の荷重率、MRIを用いた再生軟骨の形態学的な変化の観察を経時的に検査する。移植2ヵ月後に移植部位を摘出し、移植細胞の生着や硝子軟骨の再生を組織学的に評価する。移植後の腫瘍化の有無などの安全性についての検討も同時に行う。 ②犬の変形性関節症の実症例への臨床応用および治療効果の検討 股関節形成不全、前十字靱帯断裂、膝蓋骨脱臼、離断性骨軟骨症、加齢性変化により著しい変形性関節症が認められ、従来の外科手術により症状の緩和が見込められる症例で、かつ軟骨欠損が存在する犬を治療対象とする。培養人工軟骨を移植することにより、症状が悪化しないことを絶対条件とする。手術時に患者から骨髄を採取して、骨髄間質細胞の培養と培養人工軟骨の作成、そして関節鏡視下で手術についての同意を得る。骨髄を採取した後は、直ちに骨髄間質細胞を純化する。上述の条件で培養人工軟骨を作成し、約2週間後に全身麻酔下にて培養人工軟骨を関節鏡視下で移植する。術後は、リハビリテーションを行い、機能の回復を図る。担当医と協力し、日本大学付属家畜病院の現有設備を用いて、術前と術後のMRI検査、関節可動域の測定、肢への荷重の測定、関節鏡による再鏡視を行い軟骨の再生を経時的にモニターする。
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