本年度は、骨髄間質細胞を用いた軟骨再生医療の臨床応用を目指し、無血清培地を用いた時の軟骨への分化能について検討した。全身麻酔下で正常犬から骨髄液を抜去し、比重遠心分離した後に単核球を分離した。この時に得られた単核球を、従来から使用されてきた10%FBS添加αMEMで培養した群(従来群)と無血清培地を用いて培養した群(無血清群)の2群に分け検討を行った。無血清培地としては、初代培養時にSTK1、継代後の増殖培地にはSTK2を用いた。犬BMSCsの増殖能を確認した後に、ペレット培養にて軟骨へと分化誘導した。軟骨への分化誘導には、Dexamethasone、L-Ascorbic acid 2-phosphate、Pyruvate、Linoleic acid、ITS-G、hTGF-β3を含むαMEMを用いた。無血清群において、STK1を用いて初代培養を行ったところ、犬BMSCsはより早期に接着する傾向があり、培養3日目には従来群よりも多い細胞数が得られた。また、無血清群は従来群に比べて増殖能が優れており、培養14日目には従来群の約3倍の細胞数が得られた。この傾向は、STK2を用いた第1継代細胞の培養時にも同様の傾向が認められた。犬BMSCsをペレット培養して軟骨へと分化誘導したところ、両群ともに分化誘導4日目には白色で球形の細胞塊を形成した。無血清群における分化誘導28日後に得られた細胞塊の大きさは741.0±132.5μmであった。得られた細胞塊をトルイジン青染色したところ、一部において異調性を示した。本研究では、得られた細胞塊において、collagenⅡ、SOX9、aggrecanといった軟骨マーカーのmRNAの一部で発現が認められた。 本研究助成金の一部で行われた研究成果の一部は、The International Society for Stem Cell Research 12th Annual Meeting、The 4th Asian Meeting of Veterinary Surgery、第52回日本大学獣医学会、第157回日本獣医学会にて公表した。
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