研究課題/領域番号 |
24580467
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
石岡 克己 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (60409258)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肥満 / 犬 / 一塩基多型 / β3アドレナリン受容体 |
研究概要 |
β3アドレナリン受容体(β3AR)は、脂肪細胞に局在する7回膜貫通型受容体である。β3ARを構成するアミノ酸のうち64番目のアミノ酸がトリプトファンからアルギニンに変異しているヒトでは、野生型のヒトより代謝が低く、肥満や糖尿病のリスクが上昇するという報告がある。肥満の原因として遺伝的素因の重要性がヒトにおいて指摘されているが、イヌで肥満に関連する遺伝子はまだ特定されていない。今回の研究ではイヌのβ3AR遺伝子の肥満との関連を検討するため、様々なイヌにおいてβ3AR遺伝子の塩基配列を解析し、SNPの存在を調査した。 157頭、22犬種の犬の血液試料からゲノムDNAを抽出後、PCR法を用いてβ3AR遺伝子を増幅し、ダイレクトシークエンス法にて塩基配列の解析を行った。得られた塩基配列をNCBIデータベース上のイヌβ3AR遺伝子の塩基配列と比較し、得られたSNPについて検討を行った。各検体のβ3AR遺伝子の塩基配列を比較、解析した結果、合計12種類のSNPを発見した。そのうち7つが非同義的置換、5つは同義的置換であった。本年度は、主に細胞外領域や細胞内領域の非同義的置換であったSNPについて検討を行った。Ala171Thr、Cys195Trp、Ser250Phe、Pro374Argではアミノ酸の極性が変化していた。特定の犬種のみに見られるSNPは、今回発見できなかった。遺伝子頻度と肥満度の指標であるボディコンディションスコア(BCS)の関連性を検討したところ、これらのうちAla171ThrとPro374ArgでBCSが高い集団ほど遺伝子頻度が高く、Pro374ArgはBCSの低い集団ほど遺伝子頻度が高い傾向が見られた。今後さらに症例数を増やし、BCSの異なる多くの個体での検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
157頭の犬を対象に犬のDNA解析を実施し、β3アドレナリン受容体遺伝子において12種類のSNPを発見した。犬のβ3アドレナリン受容体を対象としたSNP調査は世界初の試みであり、SNPが存在しない可能性もあった中でこれだけの種類のSNPが発見できたことは大きな収穫と言える。特にそのうち7つは非同義置換であることが確かめられ、表現型に影響する可能性が充分に考えられる。犬の肥満に関連する遺伝因子はこれまで報告が無いが、今回発見したSNPのいずれかがその候補となる可能性は高いと言える。来年度以降の調査につながる成果と言える。 当初推測していた、特定犬種のみに見られるSNPを今年度見つけることができなかった点が減点の理由である。しかし肥満度の指標であるボディコンディションスコア(BCS)との関連性を検討したところ、群間の例数に偏りはあるもののいくつかのSNPにおいて肥満度との相関が認められている。肥満との関連を間接的に示すデータが得られていると言えるので、全体的にはおおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今回発見したβ3アドレナリン受容体(β3AR)のSNPは、肥満度の指標であるボディコンディションスコア(BCS)を指標に解析したところ肥満度との相関が推察された。品種との関連については、ある品種で特定のSNPが(100%でなくても)多いことが品種特異性として意味を持ちうるので、いくつかの品種にターゲットを絞り、より多くの症例を集めて犬種内での遺伝子頻度を定量的に比較することを一つの計画とする。 また、β2アドレナリン受容体、GPR-120等いくつかの新しい遺伝子についてSNP探索を行う。これまでに集めた検体を含めた解析が実施できるので、数ヶ月でデータが一気に数倍に増えることが期待できる。特にGPR-120は近年ヒトで見つかった新しい肥満関連分子であり、イヌにおける研究データは皆無である。遺伝子クローニングや臓器別発現分布を含め、基礎データを構築しながらSNP調査を進める予定である。今秋には昨年に引き続き獣医学会で継続データの報告を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度、本研究に関わる出費は遺伝子解析実験に関する試薬類が最多と予測される。DNA抽出、PCR、電気泳動、シークエンス解析等が主な用途であるが、大規模解析で多くの検体を扱うためそれだけ多くの費用を必要とする。新しい候補遺伝子を対象とした検討にはプライマーの作製や検体調製条件の決定等により多くの試薬を使用するが、特にGPR-120については利用できるデータが皆無の状況なので、基礎データの構築により多くの出費が予想される。 その他の用途としては、解析の効率を高めるために必要な機器類、解析を補助してくれる協力者への謝金、学会発表や情報交換のための出張費が考えられる。
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