研究課題/領域番号 |
24580467
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
石岡 克己 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (60409258)
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キーワード | 肥満 / 犬 / 一塩基多型 / GPR120 |
研究概要 |
2012年度は、脂肪細胞に局在する7回膜貫通型受容体であるβ3アドレナリン受容体(β3AR)についてイヌにおけるSNPを検索し、7つの非同義的置換および5つの同義的置換を発見した。これに続いて、2013年度は2番目のターゲットとして同じくヒトで肥満関連遺伝子とされるGPR120に焦点を当て、同様にSNPを検索した。まず、イヌGPR120の遺伝子クローニングを行い、ゲノムデータベース上の配列が実際に発現していることを確認した。次に臓器発現分布について調べたところ、ヒトやマウスと同様に空腸、回腸、大腸、肺、視床下部、海馬、脊髄、骨髄、筋肉、脂肪組織で発現が確認された。 144頭21犬種の被験犬を対象にSNPを検索したところ、5種類の非同義的置換(T287G、G307A、G446C、A595C、T668C)および5種類の同義的置換(C252G、C282G、A702G、G726A、T984C)を確認した。非同義的置換の遺伝子頻度はT287Gが0.125、G307Aが0.003、G446Cが0.01、A595Cが0.833、T668Cが0.003であった。A595Cは今回解析を行った21犬種のうち20犬種で確認され、データベース上のものより一般的であると考えられた。犬種別に見るとT287Gの遺伝子頻度はビーグルで0.500、G307Aはラフ・コリーで0.167、G446Cはボルゾイで0.333、T668Cはボルゾイで0.1667であり、犬種間で差が見られたことから犬種による太りやすさの違いに影響している可能性が示唆された。また、A595Cは痩せている個体の保有率が高い傾向にあり、GPR120がイヌにおいても肥満関連遺伝子である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度の研究でイヌβ3アドレナリン受容体遺伝子を対象に12種類のSNPを発見したのに続き、2013年度はもう一つの候補遺伝子であるGPR120について同様に解析を進めることができた。GPR120の肥満との関連はヒト医療においても最近の知見であり、イヌにおいてはこれまで研究が全く行われてこなかった。しかし今回、イヌGPR120を対象に遺伝子クローニングや臓器発現分布の解析データが蓄積され、さらに144頭の犬から10種類のSNPを見つけることができた。見つかったSNPのうち、特にA595Cについては肥満度との相関傾向が認められており、前回β3アドレナリン受容体で発見したAla171ThrやPro374Arg、Pro374Argに続いてイヌにおける肥満関連遺伝子の候補として有望である。機能についての解析結果がまだ出ていないものの、SNP調査については順調にデータが蓄積されているのでおおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、イヌβ3アドレナリン受容体のSNPを対象に機能の比較解析を実施する。異なるSNPのβ3アドレナリン受容体を発現する培養細胞を作製し、培地中にリガンドを添加して細胞内シグナルの活性を比較する。 また、ネコのβ3アドレナリン受容体およびGPR120遺伝子のSNPについても解析を実施する。これらはイヌについての解析実績があるため、これまでのデータやprotocolを応用することができ、より短時間で解析が進むことが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は遺伝子クローニングやSNP検索などを集中して行ったため、細胞実験系の器具や試薬類を購入する必要がなかった。今後はSNP検索に加えて培養細胞を用いた実験を平行して行うので、その分の出費が2014年度に持ち越された形となっている。 2014年度は、SNP検索の継続に加え、細胞培養や遺伝子発現実験に用いる器具・試薬類を購入する。
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