研究課題/領域番号 |
24580469
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
原田 恭治 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (70398882)
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キーワード | 脊髄再生 / 獣医療 / 骨髄 |
研究概要 |
哺乳類の脊髄神経は再生能が乏しく、事故や疾病などで脊髄を損傷すると下半身麻痺や四肢麻痺の状態が一生涯続く。我々は、動物の脊髄損傷症例に対して骨髄単核細胞を用いた臨床試験を世界に先駆けて実施したところ、明らかな治療効果が認められた。骨髄単核細胞が脊髄を再生する機序はまだ十分に解明されていないため、動物実験と獣医臨床試験の双方向からのアプローチでそのメカニズムを解明していくとともに、得られた情報のフィ ードバックから最適な脊髄再生治療法を確立していくことが本研究の目的である。 研究実績 A 脊髄損傷ラットモデルを使用した動物実験:前年度までの研究において、脊髄損傷の条件設定および組織切片および抗体染色の条件設定を精密に実施した。その結果をもとに、脊髄損傷ラットモデルに対する骨髄単核細胞の移植実験を行い、術後1週間程度でコントロール群に比較して有意な運動機能の向上(BBBスコアテスト)が得られることを確認した。さらに、移植用細胞をGFPラットから採取した骨髄単核細胞を使用した実験では、脊髄損傷部に移植したGFP陽性細胞が移植部周囲に定着し、脊髄再生に作用していることを病理組織学的に確認した。その他の免疫染色を実施した結果、移植した骨髄単核細胞からHGFが発現していることが確認された。また、一部の移植細胞は紡錘形で、血管壁に接着し、Pericyte like cellsの形態を示した。以上の結果から、移植した骨髄単核細胞が損傷部組織に定着し、一定期間HGFを産生したり血管新生に関与することで、脊髄神経の再生および保護効果が得られたものと考えられた。 B 動物症例に対する骨髄単核細胞自家移植の臨床試験:前年度までに実施できた動物症例に対する臨床試験は目標を大きく下回り、現在までのところまだ4例にしか実施できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脊髄損傷ラットモデルを使用した動物実験は順調に達成できている。それに対して、臨床試験の症例数が目標数に達していない。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、現在までに行った脊髄損傷ラットモデルより得られた成果を学会誌上などで発表する。また、前年度までに行った脊髄損傷ラットモデルと同様の実験系において、HGF製剤の投与を行い、HGF製剤単独でも脊髄再生効果が得られるのかを調査する。また、HGFの投与量によって効果発現にどのような差が得られるのかを調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定した目標に比較して、実際に適応可能な症例数が少なかったため。 動物実験および免疫染色の試薬などへ利用内容を変更し、動物実験の成果を充実させていく。
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