研究課題/領域番号 |
24580476
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
苅田 修一 三重大学, 大学院地域イノベーション学研究科, 教授 (90233999)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | セルラーゼ / 糖質加水分解酵素 / エンドグルカナーゼ / 等温滴定熱量計 / 触媒親和力 |
研究概要 |
本研究の目的である「触媒モジュール」の基質への結合特性を明らかにするために、本年度は以下の実験を行った。好熱性セルロース分解性細菌Clostridium thermocellumは、複数のファミリー5(GH5)のエンドグルカナーゼをもっているので、本菌のGH5酵素群を研究の対象とし、研究をスタートした。24年度は、Cel5A及び、Cel5Eの変異導入に取り組み、それぞれ、活性中心のグルタミン酸をグルタミンに換え活性を失った変異体の作成に成功した。Cel5Eについては、本年度購入したProfinia タンパク質精製システムを利用し、大量精製することができた。精製した変異タンパク質を使って基質との結合解析を行った。当初計画では、不溶性基質に対する結合特性を解析する予定であったが、市販可溶性基質の購入がメーカーの都合で生産できなくなったため、手持ちの可溶性基質の結合特性解析を優先し、等温滴定熱量計で可溶性基質に対する結合定数を測定した。Cel5Eについて、セロヘキサオースに対して、1.0×10 5 M-1、セロペンタオースに対して、3.3×10 4 M-1の結合定数を得た。また、Cel44Aについて、同様に3.3×10 5 M-1、1.6×10 5 M-1であった。ヘキサオースから、ペンタオースで糖が1つ減少するだけで、Cel5Eでは結合定数がおよそ3分の1に、Cel44Aでは、2分の1に減少することがわかた。これらのことにより、エンドグルカナーゼがより、長い可溶性基質に対して高い親和性をもつことが分かった。これらの結果から、エンドグルカナーゼ(セルラーゼ)は、基質への結合能力が糖鎖の長さに依存することが明らかになり、例えば可溶性基質カルボキシメチルセルロースに対する酵素活性が急速に低下する現象を説明できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、GH5の酵素を複数解析することにより、ファミリー間の特性を解析する予定であったが、変異タンパク質の発現条件の設定に時間を要したために、GH5については、Cel5Eのみの結果となってしまった。その代わり、次年度の予定であったGH44を前倒しした。 問題点として、国内メーカーが生産していた可溶性基質の生産が中止され、海外メーカーの基質が非常に高価なため、研究に制限が生まれ、遅れの原因のひとつになった。残念ながら、その部分のカバーできないので、次年度以降、若干、計画の見通しを変更したい。
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今後の研究の推進方策 |
GH5に属する酵素の解析数を増やすとともに、計画にある他のファリミーの酵素を増やしてく予定である。しかしながら、国内メーカーによる可溶性基質の製造中止により、可溶性基質が非常に高価となり、現行の研究費範囲内では、予定の研究ができなくなった。そこで、可溶性基質の関する結合特性の解析部分を割愛し、不溶性基質への結合特性の解析を中心に行う予定にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、GH5に属する酵素を、Cel5A~Cel5Eまでの変異体を作成し、タンパク質発現、精製する。これらの不溶性基質に対する結合特性を、Langmuirモデルによる解析を行い、同一ファミリー内の結合特性の差異について検討する。また、蛍光タンパク質との融合による植物切片への結合試験を行う。
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