本年度は、以下の実験を行った。Cel5CとCel5Dについての発現を検討したが、封入体が生じるなどして、期間内に十分な量のタンパク質を精製することができなかった。そこで、Cel5A、Cel5B、Cel5Eについて、詳細な比較検討を行った。 まとめると、酸膨潤セルロースへの結合量では Cel5B > Cel5A > Cel5E の順であったが、酸膨潤セルロースに対する酵素活性では、Cel5E > cel5A > Cel5B の順になり、結合量が高いといっても必ずしも酵素活性に反映しないとこがわかった。等温滴定熱量計によるセロへキサオースに対する結合定数では、Cel5A > Cel5E > Cel5B の順であり、これも可溶性基質カルボキシメチルセルロースに対する活性順とも一致はしなかった。ただ、Cel5Aは、発熱量も多く、その基質認識に水素結合の寄与が大きく、一報、Cel5Bでは、エントロピーの寄与が大きいこともわかった。計画にあった蛍光タンパク質との融合における植物細胞壁成分への結合特性の違いを検討したが、残念ながら、有意な結合が観察されなかった。このことは、触媒モジュールの結合定数は高いものの、結合量が糖質結合モジュールに比べ少ないことから、天然の植物において、触媒モジュールが直接認識できるような露出したセルロースが少ないからと考えた。これらのことから、触媒モジュールは、様々な結合パラメータをもち、糖質結合モジュール並みの結合定数を持ちながらも、その結合可能部位は、糖質結合モジュールよりも少ないこと、また、同一ファミリー内のセルラーゼであっても、その結合特性が大きくことなっており、酵素活性にも大きな違いがあることがわかり、複数の酵素をもつ意味の一部を理解することができた。
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