研究課題/領域番号 |
24580481
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
上田 光宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (50254438)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 低温適応酵素 / ミミズ / クローニング / 発現 / X線結晶構造解析 / 糖質加水分解酵素 |
研究概要 |
現在,植物バイオマスの糖化は,高温の酸あるいは耐熱性酵素を用いて高温条件下で糖化が行われている.糖化過程に必要な熱エネルギーは化石燃料(重油)が用いられていることからCO2ガスも期待されるほど削減できず,またコスト高となっている.22世紀に向けて化石燃料に依存しない低炭素社会を構築するためには,低温糖化・低温発酵する技術の開発が望まれる.現在,デンプンの糖化には耐熱性酵素を用いられている.また,木質バイオマスの糖化にはカビ由来のセルラーゼ(最適作用温度が60~70℃)が用いられているが,効率よく分解する酵素が存在しないのが現状である.そこで,これまでの酵素の性質の弱点を補うとともに,工業的にも利用できる酵素のスクリーニングを行ったところ,デンプンやセルロースに対する分解能が高く,低温活性を有する酵素がミミズに存在することを明らかにした.現在,ミミズ由来糖質分解酵素(セルラーゼ,アミラーゼなど)遺伝子のクローニングを行い,異種宿主での発現を行っている.セルラーゼ遺伝子に関しては,大腸菌における発現に成功している.大腸菌にはシャペロンも共発現するE. coli ArcticExpress を用い,ベクターには低温での誘導発現が可能なpColdIを用いた.大腸菌を破砕後,その無細胞抽出液からHisTrap カラムを用いたアフィニィティークロマトグラフィー並びに陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにより酵素の精製を行った,精製酵素を用いて低温活性を調べたところ低温下でも活性を保持していることを明らかにした.大腸菌の発現系では,シャペロンとセルラーゼとを単離することができなかった.ミミズ由来のセルラーゼの構造と機能を明らかにするために酵母での発現を試みた.現在,セルラーゼのX線結晶構造解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ミミズ由来のセルラーゼ遺伝子をクローニングしその異種宿主発現に成功し,その性質を明らかにした.このセルラーゼは低温適応性を有していた.大腸菌で発現させた酵素はシャペロンと共発現させたことから,シャペロンとの単離を試みたが,単離することができなかった.そこで,酵母(Pichia pastoris)での発現を行った,現在,X線結晶構造解析中である. 2.ミミズ由来のアミラーゼ遺伝子についてもクローニングし,異種宿主発現を試みている.現在は,大腸菌で活性のある酵素の発現に成功しているので,精製しその性質を明らかにしていく予定です. 3.セルラーゼやアミラーゼ以外の糖質分解酵素(キチナーゼ,β-1,3-グルカナーゼ等)に関してもクローニング済みである.今後,異種宿主による発現を試みる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
・セルラーゼ:セルラーゼに関しては酵母での発現に成功しているので,精製後の酵素を使用して引き続きX線結晶構造解析を行う予定である.さらに低温適応性に関与している構造を明らかにするとともに,触媒機構に関与するアミノ酸に部位特異的に変異を導入し,構造と機能に関する知見を集める.低温下でのセルロースを効率良く分解するためのカクテルの作製など行う予定である. ・アミラーゼ:アミラーゼに関しては大腸菌での発現に成功しているので,精製後性質を明らかにする予定である.低温下で糖化方法等,その有効利用法を探る予定である. ・その他の糖質分解酵素(キチナーゼ,β-1,3-グルカナーゼ):キチナーゼやβ-1,3-グルカナーゼに関しては,酵母での発現を試み,発現後の酵素を精製し,その性質を明らかにしていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
・遺伝子クローニングに要する試薬やプラスチック製品の購入する. ・発現,精製も行うのでそれに必要な試薬やカラムなど購入する. ・学会発表用の旅費として使用する予定である.
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