脱リグニン化された植物バイオマスは,高温の酸あるいは耐熱性の酵素を用いて高温条件下で糖化が行われている.糖化過程に必要な熱エネルギーは主に化石燃料(重油)が用いられていることから,コスト高になるとともにCO2ガスの排出量も期待されるほど削減できていない.化石燃料に依存しない社会を構築するためには,低温糖化・低温発酵(Simultaneous Saccharification and Fermentation:SSF)する技術の開発が望まれる.低温条件で糖化することができれば,加熱するためのエネルギーを節約できるだけでなく,SSFにより高濃度のエタノール生産が可能となる.現在,デンプンの糖化には耐熱性の酵素が用いられている.また,木質バイオマスの糖化には微生物由来のセルラーゼ(最適温度 60~70℃)が用いられているが,効率よく分解する酵素が存在しないのが現状である.そこで,これまでの性質の弱点を補うとともに工業的にも利用できる酵素のスクリーニングを行ったところ,デンプンやセルロースに対する分解能が高く,低温活性を有する酵素がミミズに存在することを明らかにした. 現在,ミミズ由来の糖質分解酵素(セルラーゼ,アミラーゼ,グルカナーゼ,キチナーゼ、マンナナーゼなど)遺伝子のクローニング並びに異種宿主発現に成功している.セルラーゼに関しては,エンド型セルラーゼ遺伝子 (EF-EG2) を酵母で発現させ,精製を行った.精製した組換え型EF-EG2は低温活性を有していた.また,X線結晶構造解析により EF-EG2の構造を明らかにしている.本酵素は構造既知の低温適応酵素と同様,分子表面が負電荷に富んでいたことから,低温適応性との関連が示唆された.アミラーゼに関してもα-アミラーゼ遺伝子を酵母で発現させ、精製を行った.精製酵素の性質を明らかにしたところ,低温活性を有していた.
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