研究課題/領域番号 |
24580482
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
阪口 利文 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (10272999)
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キーワード | 深海底生物資源 / 元素回収 / 単体元素 / 分子系統解析 / セレン同化代謝 |
研究概要 |
昨年度、新規の微生物株の獲得など良好な結果が得られたため三陸沖の日本海溝6千メートル級の深海底からセレン・テルルオキサニオン還元能を有する微生物の探索について、昨年度から継続して研究を継続した。これと平行して、特に、本年では深海底のみならず浅海の海洋泥や生物試料などから新たに目的微生物株の探索を実施した。昨年度、好気的にセレン・テルルオキサニオンが還元できる分離株の存在が判明した事実を受けて、同化的なプロセスによるカルコゲン元素の還元可能性について新たに着想した。その結果、好気的な条件でセレン(テルル)オキサニオンを還元できる多くの分離株が獲得でき、TEM/EDS観察・分析によってセレン・テルルナノ微粒子の合成・変換が確認できた。この結果から、ほぼすべての微生物によるセレン・テルルナノ微粒子の合成・変換の可能性が示唆されるものであり、異化代謝によってセレンオキサニオンを還元する(従来の)既存株とは異なり、硫黄やセレンの同化代謝によって高効率かつ簡便にセレンオキサニオンを還元できる可能性が明らかになった当該研究の進展の必要性があると思われた。 なお、当初の得られた分離株に対するキャラクタリゼーション、培養特性、形成されたナノ微粒子の観察、元素分析も引き続き実施した。また、本年度、優先的に行われたバイオリアクターの作製では連続・循環型の他に、(バフッル用いた)バッチ方式についても検討し、セレンの回収が可能であることが明らかにした。さらに、得られたセレン・テルルオキサニオン還元に関与する分子種の特定、還元機構の解明に向けた研究については、16SrDNA一部の分離株がShewanella属に属する新種の微生物種であることが判明した。これらの分離株による銀、パラジウムなど貴金属元素の単体ナノ微粒子への変換についても研究を行い、銀微粒子の形成が示唆される結果を得ることができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度おける研究目標としては、分離株を用いた元素回収用バイオリアクターの構築、セレン・テルルナノ微粒子合成の反応に関与する遺伝子の想定について開始していなければならないことを考えれば、進展度は十分とは言えない状況である。しかしながら、新種株の同定や同化代謝と考えれる好気的なセレン・テルルナノ微粒子の変換・合成の可能性と分離株についての研究結果を得ることができたことや新種株による銀ナノ微粒子への同時変換回収の可能性についても研究結果を得ることができている。今後、分離株のII-IV化合物半導体の生物素材として活用可能性などの派生研究が期待されるものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度からは特に遺伝子・分子生物学的手法を用いたセレン・テルルオキサニオン還元に関与する分子種の特定、還元機構の解明に向けた研究を実施する。本研究については嫌気呼吸によるセレン還元のみならず同化代謝に基づく還元分子種の特定についても研究をすすめる。また、分離株のII-IV化合物半導体の生物素材として活用可能性などの派生研究も視野に入れた研究を計画研究とともに実施したい。最終年度として、得られた微生物による材料合成、資源回収の有用性について明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
循環型リアクターの作製費用に充当すべき費用の余剰であり、次年度に当該課題を遂行する予定である。 リアクター作製、並びに還元・微粒子化関連分子の探索のための装置、試薬類の購入、成果発表(旅費)に使用する予定である。
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