昨年度から継続して行ってきたバイオリアクターの作製では連続・循環型の他に、(バフッルなどの振盪条件での)好気条件におけるバッチ方式のバイオリアクタの構築についても検討し、同システムによるあらかじめ培養した菌体を用いたセレンの回収が可能であることを明らかにした。これまで分離株におけるセレン・テルルの異化的代謝を利用したセレン・テルル回収の可能性について検討してきたが、それとは異なる硫黄代謝などの同化的プロセスと連携したセレン・テルルオキサニオンの元素体セレン・テルルへの変換・回収が可能であることが判明した。この手法を用いることで嫌気処理を必要としないセレン(テルル)オキサニオンの変換・還元によるセレン(テルル)の元素の回収が達成できた。更に、元素解析、電子顕微鏡観察などの結果から回収されたセレン・テルル元素は異化的代謝に基づいて形成されたものと同じ粒径、形状、元素構成であることが明らかされた。この結果を利用して、コウジカビ(アスペルギルス)や糸状菌などの培養菌体を用いた場合でも同様に同化的な代謝プロセスと思われるセレン・テルル回収が可能であることが確かめられた。また、同菌種を用いて簡易的な循環型リアクターを作製した。その結果、これらの培養菌体をそのまま用いた場合でもセレン・テルル回収が達成され、本研究の派生効果が認められた。次に、分離株による銀、パラジウムなど貴金属元素(レアメタル)の単体ナノ微粒子への変換についての研究を実施したところ、菌体活性による銀イオンの沈澱化が確認された。この結果から銀微粒子の形成が予想されたが、Shewanella algaの場合にみられるような、銀イオン添加後、数分以内での急激な沈殿物の形成はみられず、その形成は数日を要するものであることが確認されたが、分離株におけるレアエレメント金属イオンの生物還元については可能であることが明らかにされた。
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