研究課題
基盤研究(C)
モデル植物、シロイヌナズナ近縁のThellungiellaは、多くの塩生植物で見られる塩腺のような形態的な特性が無いにもかかわらず、海水程度の塩濃度下でも生育可能な程の著しい耐塩性を示すほか、極めて高い凍結耐性、オゾンストレス耐性、さらに私たちの研究によって高温ストレスにも耐性を示すことが明らかとなってきた。これまでの先行研究においてThellungiella由来の完全長cDNAライブラリーを作製し、これらcDNAsを用いた機能獲得型スクリーニング、FOX huntingにより耐塩性あるいは高温耐性を付与する遺伝子の同定を進めてきた。本年度はこれまでに得られた高温耐性付与遺伝子について機能解析を行った。この高温耐性付与遺伝子は、シロイヌナズナのHeat shock factor A1d (HsfA1d)と高い相同性を示す遺伝子であった。HsfA1dは高温ストレス応答に関わる転写因子として知られているものの、過剰発現による高温耐性の付与、あるいは転写制御している下流遺伝子群については未知であった。そこでマイクロアレイ解析により、下流遺伝子を決定した。ThellungiellaとシロイヌナズナのHsfA1dの機能に違いがあるのかを確かめるため、それぞれの細胞内局在、HsfA1dの制御因子として知られるHsp90との相互作用を調べたが違いは認められなかった。次にシロイヌナズナのHsfA1dを過剰発現させるトランスジェニック植物を作成し、高温耐性を確かめたところ、Thellungiella HsfA1d過剰発現株と同様、下流遺伝子群の発現を上昇させ、高温耐性が向上することが明らかとなった。以上の結果をまとめて国際科学誌Molecular Plantに論文を発表した。また社会的に理解を得やすい成果だったことからプレスリリースを行い、新聞や学会のホームページに掲載された。
1: 当初の計画以上に進展している
本課題で得られた高温耐性付与遺伝子の解析結果について、論文発表すると共に、プレスリリースすることで社会への情報発信することができた。本成果については、次号の科研費Newsへの掲載も決まっている。
T. salsuginea完全長cDNAを用いたFOX huntingで特定した1遺伝子については、極めて高い高温耐性を付与できる遺伝子であったことから、応用的にも非常に有望であり、実際にモデル作物であるMicro-Tomへの遺伝子導入が完了した。高温耐性作物の作出が期待される。
分子生物学実験一般試薬、植物育成用滅菌シャーレ・ポット・ピペットマンチップ各種、各種遠沈管チューブなどのプラスチック用品の他、植物育成園芸用品の購入を予定している。また、導入遺伝子の作成・確認に関連するシークエンス解析は外注する予定。この他、マイクロアレイ解析に必要なチップセットの購入を予定している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www.nodai.ac.jp/hojin/upload/News_Release_20130208.pdf