研究課題/領域番号 |
24580483
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
太治 輝昭 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (60360583)
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キーワード | 塩生植物 / Thellungiella / Fox hunting / 完全長cDNA / 耐塩性 / 高温耐性 |
研究概要 |
Thellungiella salsugineaは、モデル植物 Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)と近縁でありながら、海水程度の塩濃度下でも生育可能な他、凍結・高温にも耐性を示すことから、植物のストレス耐性を研究する上で非常に優れた遺伝子資源である。これまでにThellungiella の様々な組織、あるいはストレス処理を施した植物体由来の完全長 cDNA を用いて、機能獲得型スクリーニングとして知られる、Full-length cDNA over expressor gene hunting (以下 FOX hunting) を行ってきた。昨年度は高温耐性付与遺伝子を単離し、論文発表の他、プレスリリースを行い、本年度の科研費Newsでも紹介された。本年度は、この完全長 cDNA ライブラリーより抽出した 374 個の転写因子および 89 個のトランスポーターをコードすることが予想される遺伝子を対象に FOX hunting を行い、Arabidopsis に耐塩性を付与する遺伝子の同定を試みた。75遺伝子について独立した8ラインごとのトランスジェニック植物を作成し、それぞれ耐性評価を行った結果、1遺伝子において独立した複数ラインが耐塩性を示すことが明らかとなった。当該遺伝子はトランスポーターをコードする遺伝子であったが、ストレス耐性などについて報告例がなく、新規の耐塩性付与遺伝子であることが示唆された。さらにこの遺伝子のArabidopsisオーソログ遺伝子についても過剰発現植物を作出したところ、同様に耐塩性の向上が認められたことから、本遺伝子が耐塩性付与遺伝子であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、新たに1つの耐塩性付与遺伝子を見いだすことに成功した。上述のようにArabidopsisのオーソログ遺伝子でも同じく耐塩性の付与効果が得られることから耐塩性付与遺伝子と強く示唆されると同時に、これまでストレス耐性への関与が知られていない遺伝子であることから、論文発表に向けても大いに期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた耐塩性付与遺伝子については、過剰発現することにより、他の植物へ耐塩性を付与することが可能であることを示すことに成功したが、本遺伝子の導入により、どのように耐性を獲得にしたかは不明である。特に本遺伝子はトランスポーターをコードする遺伝子と予想されるため、輸送する基質を明らかにすることが出来れば、よりインパクトのある論文での発表が期待できる。そこで現在、このトランスポーターの基質を同定することを目的に、信州大学の堀江智明准教授と共同研究を開始し、動物細胞や酵母を用いて基質の同定を試みている。 また、昨年度論文発表した高温耐性付与遺伝子については、筑波大学の江面浩教授との共同研究において、モデル作物であるMicro-Tom(極矮性トマト)への遺伝子導入を行い、トランスジェニックトマトを得ている。これまでに導入遺伝子の高発現を確認しており、現在、高温耐性について評価している。 本年度が最終年度であることから、どちらの遺伝子についても本年度中によりインパクトのある論文への投稿を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に次世代ゲノムシーケンサーを用いた、大規模な遺伝子発現解析を計画していたが、トランスジェニック植物の準備が整わず、実施する事が出来なかった。 トランスジェニック植物の準備も整いつつあることから、これらを用いて大規模な遺伝子発現解析を実施する。
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