Eutrema salsugineum (以前はThellungiella salsugineaとして知られてきた) は、モデル植物 Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)と近縁でありながら、海水程度の塩濃度下でも生育可能な他、凍結・高温にも耐性を示すことから、植物のストレス耐性を研究する上で非常に優れた遺伝子資源である。これまでにE. salsugineumの完全長 cDNA を用いて、機能獲得型スクリーニングとして知られる、Full-length cDNA overexpressor gene hunting (以下 FOX hunting) を行ってきた。昨年までに、高温耐性付与遺伝子(TsHsfA1d)および、耐塩性付与遺伝子(トランスポーターをコードする遺伝子)を単離した。TsHsfA1dについては、筑波大学の江面浩博士との共同研究において、極矮性トマト、Micro-Tomへ遺伝子導入した植物体を得た。そこで本年度は、上記の実験材料を用いて、各遺伝子の機能解析を行った。 TsHsfA1d導入トマトについては、目的通りに過剰発現している植物体を3ライン得ることが出来た。シロイヌナズナにおける過剰発現株同様、トマトにおいても通常生育条件下では、野生型と比較して植物体のサイズに違いは認められなかった。2つの異なる高温耐性評価方法を用いて試験した結果、いずれの試験においても、野生型と比較して高温耐性を示すことが明らかとなった。シロイヌナズナ同様、トランスジェニック植物では、HSPなどの遺伝子発現が高発現していることが明らかとなった。 トランスポーター遺伝子については、基質を同定するため、信州大学の堀江智明博士と共同研究を開始し、動物細胞や酵母に導入するための遺伝子コンストラクトが完了した。
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