都市近郊緑地におけるチョウ類相の変遷を明らかにするために、森林総合研究所四国支所(高知市)および関西支所(京都市)で、過去および最近に採集されたチョウの標本を整理して、所産種の一覧表を作成するとともに、現地調査を行った。これまでに四国支所では55種が、関西支所では45種のチョウが記録された。このうち四国支所について、年代別に記録された種の検討を行った。その結果、1990年代前半には普通に生息していたウラゴマダラシジミが2000年代には全く記録できず、絶滅した可能性があると考えられた。また国のレッドリストで絶滅危惧II類とされているツマグロキチョウは、1990年代前半には少数採集されたが、2000年代には記録できなかった。この種については1990年代の記録が偶産個体であった可能性もあるため今後さらに検討を要する。これらとは逆に、1990年代前半には高知県では分布が一部に限定されていたヤクシマルリシジミが、2000年代には四国支所でも普通に見られるようになり、また最近各地で発生が報告されるようになった迷チョウのクロマダラソテツシジミが2000年代に採集された。このように四国支所では、1990年代以降、チョウ相に若干の変化が見られることが明らかになった。関東地方の4か所(森林総合研究所本所、同千代田試験地、同多摩森林科学園、都立林試の森公園)において、チョウ類の定量データを得るために通年の野外調査(トランセクト調査)を行った。
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