都市近郊緑地におけるチョウ類相の変遷を明らかにするために、北海道支所で過去に採集された標本を整理し、現地調査を行った。隣接地を含み74種が現在までに記録された。1980年代に生息していた草原性種のうち数種が絶滅したと考えられる。また、現在分布を拡大しているシロオビヒメヒカゲ道東亜種が確認されるなど、新たな種の侵入もみられた。関東地方の4か所において、チョウ類の定量データを得るために通年野外調査を行った。全調査地で、絶滅または衰退した種、新たに侵入または増加してきた種にそれぞれ共通した特徴の抽出を試みた。最近約30年間に、関東以南の各地では近年、分布を北上させる傾向の強い種や外来種、林内性の種が新たに加わった一方で、レッドリスト種の一部が見られなくなるなどの変化が起こっていた。森林総合研究所本所と千代田試験地において、管理とチョウ類群集の長期変化について検討し、チョウ類の衰亡・繁栄理由を考察した。両地とも、1年間の記録種数はあまり変化していないが、個体数は、本所では18年間で約1.7倍、千代田では8年間で約1.5倍に増加した。種ごとの個体数変化は同調して起こっており、特に草刈り管理のしかたと薬剤散布方法の変化に密接に関係していると考えられた。 都市近郊においてチョウの多様性を保つためには、①時期をずらしながら徐々に草刈りを行う、②薬剤散布を可能な限りひかえる、③草(ササ)刈りを強度に行わず適度に放置するエリアを設ける、④高木樹種の高齢化を抑える(適度に伐採して更新する)等の管理が有効であると考えられた。
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