研究課題/領域番号 |
24580487
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
阿部 薫 独立行政法人農業環境技術研究所, 物質循環研究領域, 領域長 (70355551)
|
研究分担者 |
和木 美代子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 主任研究員 (10355092)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ANAMMOX / 人工湿地 / 表面流 / 浄化槽放流水 |
研究概要 |
ANAMMOX は、嫌気条件下でアンモニウムイオンと亜硝酸イオンから窒素ガスを生じる独立栄養細菌による反応で、従来の硝化-脱窒とは異なる新しい窒素除去プロセスである。亜酸化窒素を発生しない・水素供与体の添加不要などの利点から排水処理分野で研究が進んでいる。自然界では、海洋の窒素循環における重要性が指摘されているものの陸域生態系における研究は少なく、人工湿地のANAMMOX活性の分布や環境条件の影響は未解明である。本研究では、水質浄化用の表面流人工湿地において、活性の湿地内分布とそれを規定する環境要因を解明し、人工湿地でANAMMOX反応を利用するための基礎的知見を得ることを目指す。 アンモニア態窒素と硝酸態窒素を同程度含む浄化槽放流水が流入する表面流型人工湿地(約500m2)において、15N標識スラリー培養法により湿地表層土壌のANAMMOX活性を測定したところ、経時的に29N2の生成量の増加が認められ、わずかな活性があると判断される地点が見出された。活性のあった地点の不攪乱土壌ブロックを用いた小型人工湿地(20.5×13.5×6.5Hcm)に、2ヶ月間硝酸アンモニウムを流入させ室内馴養したところ、活性の増加が認められた。小型人工湿地は室内管理及び基質となる硝酸アンモニウムを継続的に供給したので、温度や基質供給などの条件が良好であったためと考えられる。また、土壌の表層部が底部より高いANAMMOX活性を示した。現地の表面流湿地においても深度別の分布を調べたところ、小型人工湿地と同様に、ANAMMOX活性は、表層2cm>2~5cm深>5cm以深の順となり、表層の方が高い結果が得られた。これは、表面流であるため、酸素や基質の供給が表層部分に限定されたためと考えられる。一方、湿地内のANAMMOX活性の水平分布にも偏在が認められ、植生の分布や湛水の有無などとの関係が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浄化槽放流水が流入する表面流型人工湿地において、湿地土壌にANAMMOX活性のあることが確認できた。また、ANAMMOX活性の10cm深までの垂直分布について、湿地土壌の非攪乱土壌ブロックを用いた小型のモデル湿地実験と現地湿地調査の両方で、表層土壌の方が高い活性を示すことを明らかにできた。さらに、現地湿地内のサイトにより活性に偏在が認められることを確認し、当初計画していた通り人工湿地における活性の垂直・水平分布に関する新規な知見を得ることができた。加えて、ANAMMOX活性と植生、湛水などの環境条件との関係を示唆するデータも得られており、ANAMMOX活性に影響する環境条件の解明に向け、研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに現地調査を継続し、湿地内の活性の分布についてデータの蓄積を進めると同時に、それに影響する環境要因(酸化還元電位、土壌中の基質となるアンモニウムイオン・亜硝酸イオン濃度、排水の流れ込み状況、植生の影響など)の抽出とANAMMOX活性との関係解明を行いたい。特に、同じように湛水している条件下では、植生の有無で活性に顕著な違いの観測されるケースがあったため、植生の影響について、詳細な調査・解析を進めたい。 また、ANAMMOX反応が生じていることを確認するため、活性の検出だけでなく、湿地土壌の遺伝子解析によりANAMMOX細菌の分布の調査も併行して実施し解明を進めたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、現地湿地のANAMMOX活性の分布の調査に注力し新しい知見が得られたので、H25も計画通り環境要因との関係を解明していく予定であるが、研究の深化のためには、ANAMMOX活性に加えANAMMOX細菌の分布に関する調査も併行して進めることが重要と考えられた。そこで、遺伝子解析のための経費を残し、冷凍保存してある土壌サンプルの遺伝子解析をH25年度以降にまとめて実施することとした。また、植生の影響も予想より大きいことが示唆されたため、その解明を強化することとし、予算の一部をH25以降に繰り越すこととした。
|