研究課題/領域番号 |
24580487
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
阿部 薫 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, その他 (70355551)
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研究分担者 |
和木 美代子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (10355092)
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キーワード | ANAMMOX / 人工湿地 / 表面流 / 窒素 / 浄化槽放流水 |
研究概要 |
ANAMMOX は、嫌気条件下でアンモニウムイオンと亜硝酸イオンから窒素ガスを生じる独立栄養細菌による反応で、従来の硝化-脱窒とは異なる新しい窒素除去プロセスである。亜酸化窒素を発生しない、水素供与体の添加不要などの利点から排水処理分野で研究が進んでいる。自然界では、海洋の窒素サイクルにおける重要性が指摘されているものの、陸域生態系特に人工湿地における分布や環境条件の影響は未解明である。本研究では、水質浄化用人工湿地において、活性の湿地内分布と関係する環境要因を解明し、ANAMMOX反応利用のための基礎的知見を得ることを目指す。 昨年、アンモニア態窒素と硝酸態窒素を同程度含む浄化槽放流水が流入する表面流型人工湿地において、15N標識スラリー培養法により測定したANAMMOX活性(ポテンシャル)は、表層2cmが最も高いとの結果が得られた。そこで、本年は、流入口からの距離、湛水状況、植生の有無などの環境条件の異なる湿地内7カ所で、表層2cm深 の湿地土壌のANAMMOX活性を測定し、水平分布を調査すると共に土壌の水分、強熱減量、KCl抽出形態別窒素濃度などの調査を実施した。その結果、流入口近傍の湛水し易い地点での活性が高く、土壌の含水率、亜硝酸性窒素濃度と有意な相関(Spearman)が認められ、反応基質の連続的な供給や亜硝酸イオンが集積しやすい適度な還元条件が必要と考えられた。また、湛水している地点でも、植生のある地点が無い地点に比べ高い活性を示す傾向も見出された。さらに、活性の最も高い地点および流入水のDNAクローン解析の結果、各々4及び3つのOUT(操作的分類単位)が得られた。これらは、水田、湖沼底泥、湿地などの淡水環境のANAMMOXクローンと98-100%の相同性を示したことから、もともと当該湿地にいたANAMMOX菌が活性を示している可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浄化槽放流水が流入する表面流型人工湿地において、湿地土壌のANAMMOX活性の10cm深までの垂直分布と、表層2cm深の水平分布が明らかとなり、土壌の湛水状況(水分含有率)、亜硝酸性窒素の影響など、当初計画していた通り人工湿地における活性の垂直・水平分布とそれを規定する要因に関する新規な知見を得ることができた。さらに、ANAMMOXのDNAクローン解析の結果、ANAMMOX活性を示す菌の由来に関する情報も得られ、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ANAMMOXのDNA量(コピー数)の湿地内での分布を明らかにするとともに、湿地内のANAMMOX活性の分布との関係及び脱窒活性や環境要因(酸化還元電位、土壌中の基質となるアンモニウムイオン・亜硝酸イオン濃度、排水の流れ込み状況、植生の影響など)の関係解析を進め、ANAMMOX活性に影響する要因を考察する。また、湛水している条件下で植生が活性に与える影響を調べるため、植生からの距離と活性の調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度以降は、研究の深化のために、ANAMMOX活性に加えANAMMOX細菌に関する調査も併行して進めることが重要との視点から、予算を繰り越し、現地湿地のANAMMOX活性の分布の調査とともにANAMMOX細菌の解析を進めてきた。H25年度は、DNAプロファイルの解析を行い湿地のANAMMOX細菌の由来に関する知見が得られた。H26年度は、さらにDNAに関する解析を進め湿地土壌中のANAMMOXのDNA量(コピー数)の湿地内分布の解析を進めることが研究推進上重要と考え、引き続き予算の一部を繰り越して実施することとした。 H25年度は、DNAプロファイルの解析を行い湿地のANAMMOX細菌が当該土壌にいた菌である可能性が高いとの知見が得られた。H26年度は、湿地土壌中のANAMMOXのDNA量の湿地内分布の解析を進め、ANAMMOX活性や土壌の理化学性との関係解明を進めると共に、植生とANAMMOXの関係を調査し、影響する環境要因等の解析を進める予定である。また、これまでANAMMOX活性のある湿地土壌を添加し馴養してきた小型湿地において、汚水流下方法とANAMMOX菌の分布などを調査する。
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