ANAMMOX は、嫌気条件下でアンモニウムイオンと亜硝酸イオンから窒素ガスを生じる独立栄養細菌による反応で、従来の硝化-脱窒とは異なる新しい窒素除去プロセスである。亜酸化窒素を発生しない、水素供与体の添加不要などの利点から排水処理分野で研究が進んでいる。自然界では、海洋の窒素サイクルにおける重要性が指摘されているが陸域生態系における研究は少なく、人工湿地のANAMMOX活性の分布や環境条件の影響は未解明である。本研究では、水質浄化用の表面流人工湿地において、活性の湿地内分布とそれを規定する環境要因を解析し、人工湿地でANAMMOX反応を利用するための基礎的知見を得ることを目指す。 アンモニア態窒素と硝酸態窒素を同程度含む浄化槽放流水が流入する表面流型人工湿地(約500m2)において、これまでの調査で、15N標識スラリー培養法により測定したANAMMOX活性は、表層2cmが高く、また、環境条件の異なる湿地内7地点での水平分布を調査すると、入り口からの距離、土壌の含水率、亜硝酸性窒素濃度と有意な相関が認められた。湿地土壌よりDNAを抽出し、ANAMMOX菌の16S rRNA遺伝子のコピー数を測定したところ、ANAMMOX活性の分布と概ね同様の傾向が得られ、最もANAMMOX活性の高い地点において最大1.42x1013 (copy/g-DNA)、 3.46x108 (copy/g-dry soil)であった。同じように湛水している地点でも、植生のある地点の活性が植生のない地点より高い傾向が見出されことから、マコモの中心から10cm、20cm、40cmの距離の湿地土壌のANAMMOX活性を調べたところ、顕著な差は無かったが、外側の方が高い傾向にあった。根の分布密度(重さ)は内側の方が高く、根量とANAMMOX活性の関係は明瞭でなかった。一般的にマコモの根圏は60cm程度まで分布し、外側の方が若い根が分布している可能性もあるため、今後根の長さ密度や根活性との関係の検討の検討も必要と考えられる。
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