研究課題/領域番号 |
24580488
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
吉田 重信 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 主任研究員 (90354125)
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研究分担者 |
小板橋 基夫 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 主任研究員 (10355662)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | なし |
研究概要 |
平成24年度はヘルパーバクテリアの種類およびその構成を解明することを目標に、まず、イチゴ炭疽病菌が感染はしているが発病しない葉(潜在感染葉)を安定的に作成するための実験系を構築した。すなわち、イチゴの品種「女峰」の2~4番目に若い完全展開葉の表面に対し、当研究所保存の炭疽病菌Colletotrichum gloeosporioides S0709株の所定濃度の分生子懸濁液を7ul滴下することで、炭疽病菌の潜在感染葉を効率的に作出できることを明らかにした。次に、当研究所保存のイチゴ生息細菌360菌株の中から様々な属に属する70菌株を選び、細菌懸濁液を作成した後、上記の開発した接種系により対照区(病原菌のみ接種区)で潜在感染する条件下で病原菌と共接種を行った。その結果、Methylobacterium属およびBrevundimonas属細菌の複数系統で発病助長効果を持つこと明らかにした。これらの結果から、イチゴに常在的に生息しているMethylobacteriumおよびBrevundimonas属細菌がヘルパーバクテリアとして機能しうることを明らかにできた。 また、代表菌株として選定したMethylobacterium sp.WI447株、Brevundimonas sp.WI311株について、それらの処理タイミングと炭疽病菌の接種タイミングを変えて発病助長効果を検討した結果、炭疽病菌を接種した後にこれら細菌株を処理することで発病が助長されることを明らかにした。このことから、これら細菌株の助長効果は、病原菌が予め潜在的に感染している状態が前提であることが確認できた。 以上の知見は、植物葉面に常在的に生息するとされるこれら両属細菌の新たな生態的機能の可能性を示すものであり、学術的にも意義の大きい成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げた平成24年度の研究計画は「イチゴ炭疽病におけるヘルパーバクテリアの種類およびその構成の解明」であるが、現在までの研究実施により、上述のようにその種類を明らかに出来たことから、24年度の研究目標は着実に達成できたと判断される。このため、今後も円滑に研究を実施できる見込みであり、最終的な研究目的についても当所の予定通り達成されることが期待出来る。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当所の計画通り実施する予定である。すなわち、25年度はこれまでに明らかにしたヘルパーバクテリアの発病助長因子の探索を目指す。さらに、その探索が想定以上に進捗した場合には、助長因子の単離も目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヘルパーバクテリアの発病助長因子の探索を行うために必要な試薬・理化学消耗品等を購入する予定である(約120万円)。また、その探索のためには、細菌の大量培養やバイオアッセイ、アッセイの前の試料の前処理等で多くの実験操作が必要となるため、実験補助者を雇用して対応したいと考えている。このため、研究費の一部は雇用に係る人件費(賃金)として使用する予定である(約100万円)。さらに、関連学会等に出席するための旅費としての使用も計画している(約30万円)。
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