本研究では、これまでにヘルパーバクテリアの代表菌株としてWI447株を見出し、その処理によって、イチゴ成葉上での炭疽病の病斑形成が助長されると共に、炭疽病菌の分生子の発芽や付着形成といった感染初期行動が促進されること等を明らかにした。 これまでの成果を踏まえ、平成26年度は、本菌株の発病助長因子の解明を行った。すなわち、これまでの予備的検討を踏まえ、可能性が最も高いと考えられた本菌株菌体に由来する低分子成分に着目して発病助長効果の検討を行った。まず、菌体の超音波破砕および破砕後の超遠心分離により、菌体の可溶性画分、膜壁画分に分別し、それぞれの発病助長効果を調べた結果、膜壁画分で発病が助長されることを明らかにした。この膜壁画分は、炭疽病菌の発芽分生子の付着器形成を促進することも確認された。しかし、その隔壁成分からの更なる助長因子の特定には至らなかった。一方、液体培養培地の種類によっては、本菌株の培養上清でも発病助長効果を持ちうることも明らかとなった。培養上清の促進効果は脂溶性画分では認められず水溶性画分で認められ、熱処理でも安定的であったことから、本属細菌が分泌する糖成分の可能性が考えられた。そこで、Methylobacterium属細菌が生産する菌体外多糖に特徴的に含まれるピルビン酸およびマンノースに着目し、発病助長効果を調べた。その結果、ピルビン酸で高い助長効果が認められたことから、ピルビン酸がWI447株の助長因子の一つとして機能している可能性が示唆された。
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