農耕地におけるミミズ群集の変動要因の解明に向けて大きく2つのテーマで研究を進めた。1つは農法がミミズ群集に及ぼす影響、もう1つはミミズの団粒形成機能の定量評価である。本年度は、団粒形成機能の定量化を進めるとともに畑地において環境保全型農法がミミズの生息種数に及ぼす影響を評価した。団粒形成機能の定量化については、土壌炭素、pH、粘土含量などの土のパラメーターから団粒形成量を推定する試験を行うため、全国から15箇所の土を採取した。土壌炭素、粘土含量等を測定するとともに、団粒形成量を測定した。しかし、砂の多い土ではこれまで用いていた団粒形成量を測定する方法では、正確に評価できないことが明らかとなった。このため新しい測定手法を開発し、今後の研究の基礎を構築した。 環境保全型農法がミミズの生息種数に及ぼす影響を評価する研究では、これまでに採取した環境保全型農法実践圃場(カバークロップ栽培、自然草生栽培)のサンプルの種名を調べるとともに、要因実験(年間耕起回数と有機物施用)で得られたサンプルの種名を調査した。その結果、カバークロップ栽培、自然草生栽培で種数が増加すること、要因実験から耕起が種数を減らし、有機物施用が種数を増加させる効果があることが明らかになった。また農法が土壌温度と水分に及ぼす影響を評価した。ミミズは高温、乾燥に弱いことが知られているため、農法の変化が土壌温度と水分に及ぼす影響を評価する必要がある。これまでにカバークロップ栽培実践圃場においては、評価出来ていたが、他の試験圃場においては評価できていなかった。そこで、それらの圃場において、土壌温度と水分を評価した。その結果、畑地は、全ての圃場において夏期に高温、乾燥化することが明らかとなり、ミミズの生息環境としては厳しい環境となることが明らかとなった。
|