牧草や結晶性セルロースを迅速に分解する好熱細菌Caldicellulosiruptor bescii は、未知の分解メカニズムをもつことが示唆されており、効率的な繊維質バイオマス変換への応用が強く期待されている。また、細胞壁に結合する機能未知タンパク質が、細胞壁分解活性を飛躍的に向上させる機能をもつことが2010年に発見されて以来、新規な基質・酵素相互作用の探索競争が世界的に加速している。 植物細胞壁の生分解時に分泌する基質結合性タンパク質画分を調整し、含まれるタンパク質を質量分析法で解析することで、SBP (solute-binding protein)ドメインを持つが既知の触媒ドメインは無くpIが9.2~9.6である4種類の新規塩基性タンパク質を同定してPWBP (Plant-cell wall-binding protein)と命名した。C. besciiゲノムには、細胞外に分泌されることが知られている12種類のPWBP 様タンパク質が見つかり、PWBP はタンパク質ファミリーを形成していることが分かった。PWBP57とPWBP65の遺伝子組換えタンパク質を調整後、結合活性をPull Down法またはAffinity Gel法で解析すると、PWBP57とPWBP65は植物細胞の細胞壁を構成する様々な多糖類(セルロース、キシラン、アラビノキシラン、マンナン、ガラクトマンナン、リケナン、ペクチンなど)やオリゴ糖に結合できることが判明した。PWBP57とPWBP65は、不溶性多糖類の中では植物細胞壁(チモシー牧草由来)に高い結合親和性(Kaが大きい)を示すことから、PWBPタンパク質ファミリーは新規の植物細胞壁結合タンパク質であると考えられる。蛍光標識したPWBP57とPWBP65を調整して牧草(イタリアンライグラス)切片上での結合部位を蛍光顕微鏡で解析すると、両者は細胞壁に優先して結合する。
|