研究課題/領域番号 |
24580494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
前田 恵 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (20434988)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | N-グリカン / Cry j1 / Th2応答 / 植物抗原性 / 親水性クロマト / γ-ポリグルタミン酸 / 糖鎖ポリマー / ヒト樹状細胞 |
研究概要 |
植物細胞に発現する糖タンパク質糖鎖(N-グリカン)である α1-3 フコースや β1-2 キシロース含有植物抗原性 N-グリカンのコア構造 Man3Xyl1Fuc1 が,スギ花粉アレルゲン Cry j1 特異的ヘルパー2(Th2)応答を抑制するメカニズムを解明するために非標識の植物抗原性 N-グリカンの多量精製は非常に重要なステップとなる。本年度は,植物抗原性糖鎖の供給源として適している銀杏種子(1.9 kg)を用い,アセトン脱脂粉末(900 g)からタンパク質を抽出し凍結乾燥品(62 g)を得た。凍結乾燥品(33 g)は還元後,カルボキシメチル化を行い,アクチナーゼEで分解後,3種類のゲル濾過によって糖ペプチドを精製した。糖ペプチドは凍結乾燥後,50% アセトニトリルに溶解し,Shodex Asahipak NH2P-50 樹脂を用いた親水性クロマトに供し更なる精製を行った。アミノ酸組成分析により,0.1% TFA画分からアスパラギン酸と N-アセチルグルコサミンが 1 : 1.5 の比率で検出され,植物抗原性 N-グリカンにアスパラギン1残基が結合した糖ペプチド(103 mg)が精製された事を確認できた。また,糖ペプチドに結合した N-グリカンの糖鎖構造解析を行い約90 % は Man3Xyl1Fuc1,残り約10 %はMan3Xyl1Fuc1 の非還元末端にN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が 1あるいは 2分子結合した GlcNAc1~2Man3Xyl1Fuc1が結合している事が確認できた。これらの構造はβ-N-Acetylhexosaminidase消化することにより,100% Man3Xyl1Fuc1 を有する糖ペプチドの回収も可能となった。現在γ-ポリグルタミン酸に植物抗原性糖鎖を結合させた糖鎖ポリマーを作製しヒト樹状細胞の分化への影響も解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのゲル濾過による精製法に親水性クロマトを追加することによって,植物抗原性 N-グリカンのコア構造 Man3Xyl1Fuc1 を結合した糖ペプチドを多量に精製する方法を確立することができた。予備実験的にγ-ポリグルタミン酸(PGA)のカルボキシル基を BOP試薬と HOBt により活性エステルにし,糖ペプチドのアミノ基を結合させた糖鎖ポリマーを作製し,アミノ酸組成分析によりγ-PGA の約 10 % が植物抗原性 N-グリカンによって修飾されていることを確認した。in vitro の培養実験も構築中であり,糖鎖ポリマーがヒト未分化樹状細胞の分化に与える影響について,分化マーカー(CD80,CD86,HLA-DR)をフローサイトメーターで解析する方法を検討している。糖ペプチドや糖脂質を担体とした糖鎖ポリマーの作製方法の構築・改良は必要であるが,予備実験に使用可能な植物抗原性 N-グリカンを十分量準備することが出来た。並行して,培養実験の予備実験も進めており,種々の糖鎖ポリマーが揃った後の実験も順調に進展すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 糖ペプチドについては,ロイヤルゼリーあるいは雑豆由来ハイマンノース型糖鎖の多量精製や,ルイス a 抗原を含有した植物抗原性N-グリカンの供給源についてスクリーニングを進める。 (2) 糖鎖ポリマーについては,担体をγ-PGAのみならず,ホスファチジルエタノールアミンなどの糖脂質を用いることで,結合する糖鎖の数を増加させることを試みる。 (3) 培養実験については,糖鎖ポリマーによるヒト未分化樹状細胞の分化状態やサイトカイン(IL-12,IL-10)産生の変化について研究を進めることで,樹状細胞を介したT細胞分化の解析を進展させることが出来る。また,T細胞への直接的な作用について解析するため,ヒト末梢血由来CD4陽性T細胞を抗CD3/CD28抗体と増殖因子IL-2の存在下で,IL-12添加によりTh1細胞をIL-4添加によりTh2細胞を分化する培養実験系を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は研究費を下記の目的で使用する計画である。 (1) 糖ペプチド精製や糖鎖構造解析に必要な試薬類,酵素,質量分析測定費。 (2) 糖鎖ポリマー作製に必要な試薬類。 (3) 細胞培養やフローサイトメーター使用に必要な試薬類,培地,血清,サイトカイン,抗体,プレートやピペットなどのディスポーザブル製品。
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