スギ花粉症の原因物質であるスギ花粉アレルゲンCry j1は糖タンパク質でありコア構造にMan3Xyl1Fuc1を有する植物抗原性糖鎖が結合している。植物抗原性糖鎖の骨格構造Man3Fuc1Xyl1はCry j1特異的なTh2細胞増殖とTh2細胞からのIL-4産生を有意に抑制するため,花粉症の新規治療薬として応用利用が期待されている。しかしながら植物抗原性糖鎖の免疫活性は非常に弱く,この糖鎖を多価に結合した糖鎖ポリマーの作製が必要と考えられた。また,T細胞の活性化とTh1/Th2分化には,ヘルパーT細胞のT細胞受容体が抗原提示細胞の提示したMHCⅡ-抗原ペプチド複合体と結合し,続いてヘルパーT細胞上の補助受容体CD28が抗原提示細胞上の補助刺激分子CD80/CD86と結合し刺激される必要がある。そこで本年度は,(1)γPGAを用いた糖鎖ポリマー作製と(2)糖鎖ポリマーによる樹状細胞分化制御について実験を行った。(1)については,ポリマーの骨格として,納豆菌由来DL体γPGA(平均分子量20万~50万,wako社製)を使用し,γPGAのカルボキシ基にAsn-糖鎖のアミノ基をペプチド縮合剤(BOP,HOBt)により結合させた。ゲルろ過,逆相HPLCにより糖鎖ポリマーは精製し,アミノ酸の組成分析により糖鎖結合率を算出した。その結果,グルタミン酸(Glu)10残基につき1残基の糖鎖修飾を確認できた。(2)については,末梢血由来CD14陽性単球を回収し,IL-4とGM-CSFの存在化,6日間培養することにより未分化樹状細胞を誘導した。糖鎖ポリマーありはγPGAにより未分化樹状細胞を刺激し,2日間培養後,樹状細胞の分化マーカーであるCD80/CD86についてフローサイトメーターで解析した。その結果,糖鎖ポリマーはγPGAによる樹状細胞分化を有意に抑制しており,Th2応答の抑制に関わることが示唆された。一方で,今年度は,ローヤルゼリーの糖タンパク質に結合したTF抗原含有N-グリカンの多量精製にも成功し論文発表した。
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