研究課題/領域番号 |
24580495
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木村 吉伸 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (70195387)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | エンドグリコシダーゼ (ENGase) / ペプチド: N-グリカナーゼ (PNGase) / 植物糖タンパク質 / 遺伝子ノックアウト植物 / N-グリカン代謝 |
研究概要 |
植物の成長組織中には,遊離型のアスパラギン結合糖鎖(N-グリカン)がμM濃度で存在する。しかしながら,これら遊離型糖鎖の生理機能に注目した研究は少ない。本申請では,糖鎖代謝に関与する酵素の遺伝子発現制御を通して,①遊離N-グリカンの植物成長あるいは果実熟成の制御機構に関わる生理機能を実証するとともに,②その生理機能を植物成長制御技術の開発へ応用することを目的としている。平成24年度には, (1) ENGase / PNGase ダブルノックアウト(D-KO)植物及び過剰発現植物の作出を目指した。ENGase 遺伝子ノックダウントマトの構築に成功し,果実,茎,葉で発現されている遊離型糖鎖構造解析とENGase 活性測定を行い,果実部分で酵素活性がほぼ完全に消失するとともに,ENGase 産物の糖鎖が減少し,PNGase 産物糖鎖が顕著に増加することを確認した。このENGase遺伝子発現抑制とトマト果実の裂果性との相関が観察されたことから,果実熟成に関わるENGase活性の関与が示唆された。一方,植物特異的な酸性PNGaseについては,2010年に遺伝子同定を完了していることから,その遺伝子情報を基にしてトマトについては,酸性PNGaseの過剰発現株を構築し,アラビドプシスについては2種類存在するPNGase遺伝子のシングルノックアウト株を得た。更に,中性PNGaeについては,アラビドプシスにおいてノックアウト株の構築を確認し,ENGase/中性PNGaseダブルノックアウト株の構築を開始した。その他,植物複合型糖鎖の代謝分解に関わる酵素の一つである β-キシロシダーゼを銀杏種子から単一精製後,酵素学的諸性質を明らかにするとともに,N-末端配列を同定した。次いで,その配列情報を基にして,トマト果実で発現されるN-グリカン代謝関連β-キシロシダーゼ遺伝子の同定に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に従って,2種糖鎖代謝酵素(PNGase,ENGase)遺伝子をノックアウ或いはノックダウンした植物体の構築やそれぞれの変異体植物が発現する遊離糖鎖の構造を明らかにした。両遺伝子のノックアウトやノックダウン植物体の構築も進んでおり,平成25年度には,遊離糖鎖の生成を完全に抑制した植物が構築できるものと期待できる。一方,遊離糖鎖の分解に関わるβ-キシロシダーゼについても,精製酵素のタンパク質構造から遺伝子構造の推定が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
2種糖鎖遊離酵素(PNGase,ENGase)の両遺伝子をダブル(遺伝子数体には4重破壊)ノックアウ或いはノックダウンした植物体の構築を完了させる。一方,糖鎖遊離酵素遺伝子の過剰発現変異体の作成及び形態2種糖鎖遊離酵素遺伝の過剰発現を誘導した植物の構築を試みる。遊離糖鎖の分解に関与するα-マンノシダーゼ,α-フコシダーゼ,β-キシロシダーゼ等の遺伝子同定と発現系構築を完了する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上述の糖鎖遊離酵素遺伝子の発現抑制変異体及び過剰発現変異体の作成,(2) 遊離糖鎖の分解に関与するグリコシダーゼ(α-マンノシダーゼ,α-フコシダーゼ,β-キシロシダーゼ)の遺伝子同定と発現系構築,(3) 糖鎖特異的レセプターキナーゼの探索と遺伝子同定等に研究費を使用する計画である。
|