研究課題
植物の成長組織中には,遊離型のアスパラギン結合糖鎖(N-グリカン)がμM濃度で存在する。しかしながら,これら遊離型糖鎖の生理機能に注目した研究は少ない。本研究では,糖鎖代謝に関与する酵素の遺伝子発現制御を通して,①遊離N-グリカンの植物成長あるいは果実熟成の制御機構に関わる生理機能を実証するとともに,②その生理機能を植物成長制御技術の開発へ応用することを目的としている。平成26年度には以下の知見を得た。 (1) 過剰発現させたaPNGase 遺伝子ついて,GFP標識法により細胞内局在を解析し,本酵素が液胞内に局在することを明らかにした。(2) トマト aPNGase 遺伝子は6種類が存在し,その内の3種類の遺伝子は果実,茎,葉等で定常的に発現される一方,他の3種類は果実には発現されておらず,茎特異的に発現されていることが明らかになった。(3) Arabidopsis thaliana には aPNGase 候補遺伝子が2種類しか存在しないため,aPNGase 遺伝子のダブルノックアウト株の構築を試みた。その結果,ダブルノックアウト株の作成に成功し,aPNGase 遺伝子の完全消失を確認した。野生株と変異株間では,表現系には顕著な違いは認められなかったが,環境変動に対する応答に顕著な差がみられた。その他, (4) 植物複合型糖鎖の代謝分解に関わる酵素の一つである α-Fuc’ase を銀杏種子から単一精製後,詳細な基質特異性解析を行い,本酵素が α1-3/4 Fuc 結合に対して強い活性を示すことを明らかにした。一方,(5) トマト α-Fuc’ase 遺伝子の同定と異種発現系構築に成功し,組換え酵素が N-グリカン中の α1-3/4 Fuc 結合に対して活性を示すことを明らかにするとともに,分子モデリング法による立体構造解析を行った。
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