研究課題/領域番号 |
24590001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
南部 寿則 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (80399956)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 複素環化合物 / C-H挿入反応 / 不斉合成 / 触媒反応 / ジヒドロベンゾフラン / スチルベンダイマー / C-H結合活性化 / ロジウム(II)錯体 |
研究概要 |
医薬品や農薬などに広く見られる複素環化合物の触媒的不斉合成法の開発は,有機合成化学における最も重要な研究課題の一つである。本研究では,N-フタロイルアミノ酸を架橋配位子として組み込んだキラルなロジウム(II)錯体を用いて,分子内C-H挿入反応を機軸とするジヒドロベンゾフラン骨格をもつ生物活性天然物の不斉合成に取り組み,本年度は以下の成果を得た。 1)α-ジアゾカルボニル化合物を用いるC-H挿入反応は数多くのグループにより精力的に研究されているが,カルボニル基が隣接していないジアリールジアゾメタンの分子内C-H挿入反応はこれまでに報告例がない。本反応が顧みられることのなかった一つの理由として,ジアゾ基質の取り扱いの困難さが挙げられる。筆者はジアゾ基質の前駆体であるヒドラゾンから二酸化マンガンを用いる酸化によりジアリールジアゾメタンを調製し,キラルなロジウム(II)錯体Rh2(S-PTTL)4を用いた分子内不斉C-H挿入反応を行うと,高収率かつ不斉収率98%でシス配置の2,3-ジアリールジヒドロベンゾフラン誘導体が得られることを見出した。 2)上記の反応を機軸とするスチルベンダイマー天然物マキシモールAの合成を検討した。芳香環に置換基を組み込んだ基質を用いた分子内C-H挿入反応でも、先ほどと同様に高収率および高立体選択的にシス配置の環化体が得られることが分かった。その後,溝呂木ーHeck反応によりこの環化体とスチレン誘導体とをカップリングし,最後に三臭化ホウ素を作用させることで脱保護とシス体からトランス体への異性化を行い,マキシモールAの触媒的不斉合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに,平成24年度中にキラルなロジウム(II)錯体を用いたジアリールジアゾメタンの分子内C-H挿入反応を機軸とするスチルベンダイマー天然物マキシモールAの触媒的不斉合成を達成した。未だマキシモールBをはじめとするその他の天然物やそれらの誘導体の合成は達成していないものの,既に検討し始めている状況である。従って,おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
キラルなロジウム(II)錯体を用いるジアリールジアゾメタンの分子内C-H挿入反応では,立体選択的にシス配置のジヒドロベンゾフラン誘導体が得られる。このシス配置の環化体は三臭化ホウ素存在下,C2位での異性化が進行しトランス配置の異性体が得られることを見出していることから,本法によりシス体,トランス体の両異性体の合成が可能である。これらの知見を活かし,本合成ルートを用いることで様々なスチルベンダイマー天然物の合成が可能であると考えられることから,ε-ビニフェリンやマキシモール類の触媒的不斉合成を目指す。また,スチルベンダイマー類は様々な生物活性を示すことからその関連誘導体の生物活性にも非常に興味がもたれるため,本反応を機軸とする様々な置換様式をもつ光学活性スチルベンダイマーライブラリーの構築を行う。 また,分子内不斉C-H挿入反応およびC-Hオレフィン化を鍵工程とするネオリグナン類ブレクニン酸の触媒的不斉合成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では,平成24年度中にマキシモールAの合成ルートを活かして類縁体合成も行う予定であったが,鍵反応であるジアリールジアゾメタンの分子内不斉C-H挿入反応における不斉収率の向上に時間を要したため,他の天然物や類縁体の合成は次年度に行うこととした。従って,試薬類,溶媒等の消耗品が次年度追加として多少必要になることが予想されたため,一部繰り越すこととなった。また,研究成果を発表するための旅費についても,平成24年度中に予定していたものを次年度に繰り越すこととなった。
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