研究課題/領域番号 |
24590001
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
南部 寿則 富山大学, 大学院医学薬学研究科(薬学), 准教授 (80399956)
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キーワード | 複素環化合物 / C-H挿入反応 / C-Hオレフィン化 / 不斉合成 / 触媒反応 / ジヒドロベンゾフラン / ネオリグナン / ロジウム(II)触媒 |
研究概要 |
医薬品や農薬などに広く見られる複素環化合物の触媒的不斉合成法の開発は,有機合成化学における最も重要な研究課題の一つである。本研究では,N-フタロイルアミノ酸を架橋配位子として組み込んだキラルなロジウム(II)錯体を用いた分子内C-H挿入反応を機軸とする,ジヒドロベンゾフラン骨格をもつ生物活性天然物の不斉合成に取り組み,本年度は以下の成果を得た。 1)ネオリグナン類であるブレクニン酸類の触媒的不斉合成を検討した。文献既知の2-アリルオキシフェノールから9工程の変換によりアリールジアゾアセタートを合成した。鍵反応であるアリールジアゾアセタートの分子内不斉C-H挿入反応をRh2(R-PTTL)4存在下,-20℃のトルエン中で行うと,収率81%,不斉収率80%で目的のジヒドロベンゾフランが得られることを見出した。 2)Yuらが開発したカルボン酸を配向基とするC-Hオレフィン化を利用したブレクニン酸類の合成を検討した。不斉C-H挿入反応で得られたジヒドロベンゾフランから,アリルエステルのアリル基の除去とMOM保護されたフェノールの脱保護によりカルボン酸を得た。続いて,後の脱保護を考慮し,トリクロロエチルアクリレートを用いてC-Hオレフィン化を行ったところ,目的のC4位でのオレフィン化が進行し,カップリング体が収率50%で得られた。最後に保護基を除去し,(-)-trans-ブレクニン酸の触媒的不斉合成を達成した。得られた合成品のスペクトルデータは天然物の文献報告値とよい一致を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに,平成25年度中にネオリグナン類である(-)-trans-ブレクニン酸の触媒的不斉合成を達成することができた。もう一つの研究課題であるジアリールジアゾメタンの分子内C-H挿入反応を機軸とするスチルベンダイマー天然物の合成については現在検討中であるものの,問題なく進展している。従って,おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
キラルなロジウム(II)錯体を用いるジアリールジアゾメタンの分子内不斉C-H挿入反応では,立体選択的にシス配置のジヒドロベンゾフラン誘導体が得られる。このシス配置の環化体は三臭化ホウ素存在下,C2での異性化が進行し,トランス配置の異性体が得られることを見出していることから,本法によりシス体,トランス体の両異性体の合成が可能である。これらの知見を活かし,本合成ルートを用いることで様々なスチルベンダイマー天然物の不斉合成が可能であると考えられることから,ε-ビニフェリンやマキシモール類の触媒的不斉合成を目指す。また,スチルベンダイマー類は様々な生物活性を示すことからその関連誘導体の生物活性にも非常に興味が持たれるため,本反応を機軸とする様々な置換様式をもつ光学活性スチルベンダイマーライブラリーの構築を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では,平成25年度中にブレクニン酸類の不斉全合成とマキシモールAの合成ルートを活かしたスチルベンダイマー天然物の合成を行う予定であったが,ブレクニン酸の不斉全合成の鍵反応であるC-H挿入反応の不斉収率の向上とC-Hオレフィン化の収率の向上に予想以上に時間を要したことから,スチルベンダイマー天然物の合成は次年度に行うこととなったため。 前年度検討予定であったスチルベンダイマー天然物の合成研究について,試薬類,溶媒等の消耗品が追加として必要になる。また,本研究課題で合成した化合物のスペクトルデータ収集のための費用も追加として必要になると考えている。
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