研究課題/領域番号 |
24590008
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
好光 健彦 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30301576)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハロゲン化 / 不斉合成 / 医薬化学 / 全合成 / 抗生物質 / 創薬 |
研究実績の概要 |
興味深い生物活性を有する有機ハロゲン化合物が自然界に数多く見出され、近年、医薬・機能性物質資源としての活用への期待が高まっている。それゆえ、不斉有機ハロゲン化合物の人工的獲得をもたらす化学合成法の確立が望まれているが、この要求に十分に応え得るものは未だ必ずしも多くはない。我々は、顕著な生物活性を示す天然有機ハロゲン化合物の全合成経路を開拓し、医薬リードを創製するとともに、触媒的不斉ハロゲン化の新手法を開発すべく研究を展開してきた。これまで我々は、放線菌Chainia rubra MG802-AF1 の培養液から見出され、塩素原子によって修飾された特異な化学構造を有する抗生物質ナピラジオマイシン A1の全合成研究を進め、デヒドロ-α-ラパコン誘導体のジクロル化と立体選択的四置換炭素構築を鍵として、側鎖末端部分を除く構造単位を備えた標的天然物の骨格分子を得ることに成功している。 本年度の研究では、上記天然物の全合成の完了に向け、これまで課題となっていた鍵中間体の四置換炭素構築における収率改善に取り組んだ。その結果、モレキュラーシーブ存在下、銀反応剤によるラパコン誘導体へのアリル基導入が再現性良く進行することを見出し、鍵中間体の安定供給路を確立することに成功した。また、全合成経路の開拓の途上で得た数種の誘導体を生物活性評価に付した。現在のところ、有意な抗菌活性を示す誘導体の発見には至っていないが、本年度改善に成功した合成手法により、多岐にわたる誘導体の安定供給が可能となることから、本成果をもとに引き続き全合成の完了と各種誘導体の生物活性評価による医薬資源開拓を目指した研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的の一つであるナピラジオマイシン A1の全合成に関して、我々は、前年度までの研究で既に標的天然物の骨格を備えた化合物を得ることに成功していた。しかしながら、以前の合成経路は、鍵となるラパコン誘導体の四置換炭素構築に改善を要する等の課題を抱えており、これが全合成経路開拓における大きな障壁となっていた。本年度の研究によってこの課題を克服することに成功し、合成中間体の安定した供給が可能となった。全合成経路が現時点で未確立であるため、研究の達成度としてはやや遅れているといわざるを得ないが、全合成経路開拓に著しく寄与する上記の改善を成し得たことは今後の研究の進展にとって大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得た知見をもとにして、ナピラジオマイシンA1の全合成経路の確立に挑む。既に標的天然物の骨格を有する合成中間体の創製に成功していることから、本中間体に対する側鎖導入をさらに検討し、全合成経路を確立する。また、ナピラジオマイシン合成中間体の生物活性評価を引き続き行い、医薬資源の開拓に繋げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度における研究の途上で、研究対象としていた合成手法(反応)に関する予想外の知見を得た。従って、当初の計画を若干変更し、この新知見の探索を併せて次年度実施することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
化学合成に用いる各種試薬類、溶媒、精製用シリカゲル等の購入に必要な物品費並びに研究成果発表のための旅費等として使用する。
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