研究実績の概要 |
キラルなスピロ骨格を不斉触媒の母格に用いると、高い不斉誘起能が発現する。しかしながら、高機能性を示す光学活性スピロ[4.4]ノナン類の触媒的不斉合成法は未だ確立されていない。そこで、酸-塩基型有機分子触媒へと誘導できる汎用性の高いキラルスピロ骨格の不斉合成法の確立を目指して、カルボニル基とフェノールエーテル基を有するスピロ[4.4]ノナン類の触媒的不斉合成について検討を行った。その結果、様々な配位ユニットを導入可能なスピロ[4.4], [4.5], [5.5]アルカノン類の触媒的不斉合成法を確立した。本手法ではPd-(S,Rp)-Josiphos触媒を用いる分子内不斉α位アリル化反応により、S体のスピロ骨格が最高83% eeで定量的に得られる。本反応において高い立体選択性の発現にはエーテル部位の芳香環上の位置が重要であることが明らかとなった。さらに、得られたスピロ化合物を有機分子触媒へと変換し、aza-森田‐バイリス‐ヒルマン反応に適用したところ、この触媒の不斉誘起能が確認でき、最大54% eeで目的物を与えた。
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