研究課題/領域番号 |
24590010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
重永 章 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10423394)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NCL / タンパク質化学 / ペプチド化学 / フラグメント縮合 |
研究概要 |
本研究では、様々なアミノ酸サイトでのペプチドフラグメント縮合を可能とする高汎用性補助基の開発を目的とする。 多くの医薬品は、タンパク質と相互作用することによりその作用を発現する。すなわち、これらタンパク質の機能解明は新薬開発につながる可能性がある。タンパク質の機能解明研究において、蛍光色素などのレポーター分子で修飾したタンパク質が汎用される。特定部位のみが修飾されたタンパク質の調製法の一つとして、タンパク質化学合成の利用が挙げられる。近年、タンパク質の化学合成において、ペプチドフラグメント同士の縮合を可能とするNCL法が汎用される。しかし本手法には、縮合部位にシステイン残基を必要とするという制約があった。そこで本研究ではこの制約を打破するため、システイン側鎖模倣型補助基を利用したシステイン不要なフラグメント縮合法を確立することとした。 本研究は下記順に従って進めることとした。A)補助基誘導体の合成:アスパラギン側鎖への導入を念頭に置いた補助基誘導体を合成する。B)保護アミノ酸への導入:補助基誘導体をアスパラギン側鎖上へ導入した後、補助基含有アスパラギン誘導体を合成する。C)ペプチドへの導入:アスパラギン誘導体をFmoc固相合成法によりペプチド上へ導入し、N末端に補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドを得る。D)NCL様反応の検討:Cより得られるペプチドを用いたNCL様反応を開発する。あわせて、反応条件を最適化する。E)補助基の除去:NCL様反応生成物からの補助基除去法を確立する。F)本手法を他のアミノ酸サイトでの縮合へ展開する。 申請者は今年度、上記A~Eについて検討した。この結果、補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドの合成に成功するとともに、これがNCL様反応に適用可能であることを見出した。現在、反応条件の最適化を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は今年度、下記順に従って遂行する計画を立案した。A)補助基誘導体の合成:アスパラギン側鎖への導入を念頭に置いた補助基誘導体を合成する。B)保護アミノ酸への導入:補助基誘導体をアスパラギン側鎖上へ導入した後、補助基含有アスパラギン誘導体を合成する。C)ペプチドへの導入:アスパラギン誘導体をFmoc固相合成法によりペプチド上へ導入し、N末端に補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドを得る。D)NCL様反応の検討:Cより得られるペプチドを用いたNCL様反応を開発する。あわせて、反応条件を最適化する。E)補助基の除去:NCL様反応生成物からの補助基除去法を確立する。 この結果、当初の計画通り補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドのNCL様反応への適用に成功した。さらに、NCL様反応の条件最適化および補助基除去については現在検討中であるものの、良好な結果を示唆するデータを得ている。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドのNCL様反応への適用に成功した。さらに、NCL様反応の条件最適化および補助基除去については現在検討中であるものの、良好な結果を示唆するデータを得ている。 今後は、補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドのNCL様反応の条件最適化を図る。続いて、補助基除去のための方法を開発する。ここまでの研究を通してアスパラギン部位でのペプチドフラグメント縮合法を確立した後、本方法論のアスパラギン以外のアミノ酸部位(アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニンなど)での縮合へ展開する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、レアアースなどをはじめとする試薬の価格高騰の影響を回避するよう合成経路を設計した。この結果として研究費が抑制され、残額が発生した。しかし研究の効率は、当該試薬を用いる場合に比べ低下したと考えている。そこで翌年度以降、当初の計画にある研究費に本残額をあわせてこれら試薬の購入に充て、研究の加速に努める計画である。
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