研究課題/領域番号 |
24590011
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
石原 淳 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80250413)
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キーワード | クライゼン転位反応 / 不斉合成 / 天然物合成 / ジヒドロスピロスリオリド |
研究概要 |
申請者が開発したインジウムを用いる Reformatsky-Claisen転位反応を用い、抗菌活性、殺真菌活性等の幅広い生物活性を有するビス-γ-ブチロラクトン天然物の合成を行った。ジヒドロスピロスリオリドは2010年に伊坂らにより真菌から単離構造されたビス-γ-ブチロラクトンである。単離論文で報告された構造を有する化合物は、既に合成が報告されていたが、天然物はその合成品の分光学的スペクトルと一致せず、構造の再確認が望まれていた。そこで、本研究ではその構造確認をする目的でジヒドロスピロスリオリドの全合成に着手した。既にラセミ合成を達成したが、低収率の工程もあったことから合成の再検討を行った。まず、n-オクチルアルデヒドを原料とし、プロリン触媒とする不斉アミノオキシ化により、光学活性なアルコールを合成し、α,α-ジブロモアシルエステルへ変換した。本α,α-ジブロモアシルエステルを用いる Reformatsky-Claisen転位は前例がなかったが、実際行うと、収率よく望む化合物を与えることが判明した。次に、得られた転位体のジヒドロキシ化を検討し、super-AD-mix-βによる反応と続く酸処理により、一挙に環化反応も進行し,望むジヒドロスピロスリロリド高収率で得られることを見出した。得られた合成品は天然物のスペクトルと完全に一致し、さらに本合成品のX線結晶構造解析を行い、伊坂らが提出した構造が正しいことを明らかにした。また、同様に3-エピ-ジヒドロスピロスリオリドの合成も達成した。本合成ではほとんど保護基の導入開裂の操作を要さず、出発原料からわずか6工程の操作で、光学活性な天然物を合成できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者の開発したインジウムを用いる Reformatsky-Claisen転位反応を駆使することにより、天然物ジヒドロスピロスリオリドの不斉全合成を達成し、その構造をX線結晶構造解析にて明確にした。本合成法は類似化合物であるジヒドロカナデンソリドにも容易に応用可能である。この合成は本転位反応なしでは短工程かつ簡便にはできず、本転位反応の有用性を明らかにするものである。よって、本研究課題における当初の目的を十分達成しており、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下のアプローチを行う予定である。 1)本年度の研究で、α-ジブロモアシルエステルを基質とする反応の有用性を新たに発見した。そこでα-ジブロモアシルエステルの適応範囲について調査を行う。 2)アクリラート Ireland-Claisen転位反応の不斉反応への展開を検討する。
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