• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

茶カテキン代謝物の合成と活性評価

研究課題

研究課題/領域番号 24590014
研究機関富山県立大学

研究代表者

中島 範行  富山県立大学, 工学部, 教授 (40188959)

キーワードカテキン / 代謝物 / γ-ブチロラクトン化合物 / ガン細胞増殖阻害増強効果 / 白血病細胞HL-60
研究概要

本研究の目的は、茶カテキンの活性本体がγ-ラクトン誘導体であるかを探ることであり、光学的に純粋な代謝物の合成を行なった上で、活性の評価を行なうことである。(+)-カテキンや(-)エピカテキン誘導体からなる茶カテキンの代謝物として得られるγ-ブチロラクトン化合物の内、現在までに (+)-カテキン由来の3種と茶カテキン由来の5種が腸内細菌の代謝物として単離同定されている。申請者は10種のγ-ブチロラクトン化合物と新規にデザインした誘導体4種を加えた計14種の代謝物を数百ミリグラムスケールで化学合成し、その活性や機能の探索を行う計画である。
昨年度までに12種の代謝物の合成を終了し、今年度は、残りの2種の合成ならびに収量の少ない化合物の追加合成を行なった。さらに、共同研究者に合成した化合物サンプルを譲渡し、ガン細胞増殖阻害増強効果をまず検討した。代謝分解物、および、フラバン-3-オール類単独では、ガン細胞に対する強い増殖阻害は見られないが、2種類の化合物を混合し、少量を添加することで、フラバン-3-オール類(特にエピガロカテキン-3-ガレート、以下EGCG)の濃度が非常に低い条件でも、ガン細胞の増殖が強く抑えられる事を見出した。化合物の相乗効果により、フラバン-3-オール類の効果を高めることを可能にした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画のうち、目的とするγ-ラクトン誘導体のグラムスケールでの合成は達成した。これらを用いて、ガン細胞増殖阻害増強効果を検討した。ガン細胞として、白血病細胞HL-60、子宮頸ガン細胞HeLa, HeLa S3細胞、ヒト肺ガン細胞A549細胞、肝臓ガン細胞HepG2などを用い、これらの細胞を培養したものに、代謝分解物とEGCGを加え培養を行った。特に、HL-60細胞にはEGCGが非常に低濃度で強い増殖阻害活性を示した。
白血病細胞であるHL-60に特異的にこのような効果が生じる理由については未だ不明であり、今後の検討課題とする。

今後の研究の推進方策

計画のうち、化合物の合成ルートの構築を達成した。今後、白血病細胞であるHL-60に特異的にこのような強い増殖阻害が生じる理由について検討を進める予定である。さらに、これら化合物が有する抗酸化作用、抗突然変異作用、抗菌作用、抗アレルギー作用等を茶カテキンと比較しながら測定を進めるとともに、構造-活性相関について検討を深める予定である。
EGCGには、ガン細胞の増殖を特異的に抑制する効果が証明されており、単なる食品としてだけではなく、様々な分野において注目されている。EGCG自体の活性はそれほど強くはなく、効果を期待するには大量に摂取する必要がある。しかし、「渋み・えぐみ」の強い化合物であることから、大量に添加すると味に影響を与えることが問題となっており、この点も解決したい。

次年度の研究費の使用計画

研究は、当初計画通りに進行しており、当初予定にはなかった別途申請した補助金の受給できることになり、当初予定していた本助成金での支払い分を減額できたことが主な要因である。
本年度は助成金の最終年度に当たる。今まで得られた知見を、国内外での学会発表や論文発表等を通じて積極的に発表する予定であり、その費用に充てる。
また、本助成金の次年度使用額を当初予定していたカテキン代謝物の合成供給量を増加させる目的で使用し、国内外の研究者との活性評価を、より広くより詳細な探索を進める計画である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Development of a New Synthetic Strategy For Procyanidin Dimer Condensation Using Peracetylated Electrophiles2014

    • 著者名/発表者名
      Sayaka Ishihara, Syoma Doi, Kota Harui, Taisuke Okamoto, Shuhei Okamoto, Joji Uenishi, Takashi Kawasaki, Noriyuki Nakajima, and Akiko Saito
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 88 ページ: 1595-1602

    • DOI

      10.3987/COM-13-S(S)103

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inhibitory activity of synthesized acetylated procyanidin B1 analogs against HeLa S3 cells proliferation2014

    • 著者名/発表者名
      Syuhei Okamoto, Sayaka Ishihara, Taisuke Okamoto, Syoma Doi, Kota Harui, Yusuke Higashino, Takashi Kawasaki, Noriyuki Nakajima, Akiko Saito
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 19 ページ: 1775-1785

    • DOI

      10.3390/molecules19021775

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular weight distributions of acetylated lignocellulosic biomasses recovered from an ionic liquid system2013

    • 著者名/発表者名
      Chen Qu, Takao Kishimoto*, Masahiro Hamada and Noriyuki Nakajima.
    • 雑誌名

      Holzforschung

      巻: 67 ページ: 721-726

    • DOI

      10.1515/hf.2012.0192

    • 査読あり
  • [学会発表] アセチル化求電子体を用いたプロアントシアニジンの合成研究2013

    • 著者名/発表者名
      植西譲二, 岡本泰輔, 森口正太郎, 岡本修平, 土井翔馬, 石原沙也加, 中島範行, 齊藤安貴子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130324-20130327
  • [学会発表] プロシアニジンオリゴマーの構造―活性相関2013

    • 著者名/発表者名
      岡本修平, 石原沙也加, 岡本泰輔, 土井翔馬, 泉野麻友, 中島範行, 齊藤安貴子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130324-20130327
  • [学会発表] プロシアニジンオリゴマーのプローブ化研究2013

    • 著者名/発表者名
      岡本泰輔, 東野雄祐, 濱田義知, 石原沙也加, 岡本修平, 土井翔馬, 中島範行, 齊藤安貴子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130324-20130327
  • [学会発表] Synthesis of tea catechin derivatives

    • 著者名/発表者名
      Shunichi Naruse, Takao Kishimoto, Masahiro Hamada and Noriyuki Nakajima
    • 学会等名
      23rd French-Japanese Symposium on medicinal and fine chemistry (FJS2013)
    • 発表場所
      長崎
  • [学会発表] プロアントシアニジンの上部ユニットをアセチル化した誘導体の合成と生物活性試験

    • 著者名/発表者名
      土井翔馬, 岡本修平, 春井宏太, 石原沙也加, 岡本泰輔, 高野 祥太, 中島範行, 齊藤安貴子
    • 学会等名
      新規素材探索研究会2013
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] プロシアニジンのプローブ合成と構造-活性相関研究

    • 著者名/発表者名
      春井宏太, 岡本泰輔, 石原沙也, 加堀川敦史, 中島範行, 齋藤安貴子
    • 学会等名
      第43回複素環化学討論会
    • 発表場所
      岐阜
  • [学会発表] ガロイル基で修飾したBタイプ・プロシアニジンの細胞増殖抑制活性

    • 著者名/発表者名
      石原沙也加, 岡本修平, 土井翔馬, 岡本泰輔, 綾野義博, 中島範行, 齋藤安貴子
    • 学会等名
      第43回複素環化学討論会
    • 発表場所
      岐阜
  • [産業財産権] ガン細胞増殖阻害作用増強剤とその製造方法及び食品2014

    • 発明者名
      中島範行、川崎安貴子
    • 権利者名
      中島範行、川崎安貴子
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2014-93523
    • 出願年月日
      2014-04-30

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi