研究課題/領域番号 |
24590015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
門口 泰也 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (40433205)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 芳香族第一級アミン / 芳香族アジド / 不均一系触媒 / 銅 / 機能性物質 / 触媒・化学プロセス / 有機化学 / 合成化学 |
研究概要 |
様々な金属イオンに対するキレート形成能を有するイミノジ酢酸構造、あるいはポリアミン構造を含有するポリスチレン-ジビニルベンゼン系キレート樹脂、ダイヤイオンCR11(イミノジ酢酸型)およびCR20(ポリアミン型)を硝酸銅三水和物と室温で穏やかに撹拌することで、固定化銅触媒(12% Cu/CR11及び7% Cu/CR20)を調製した。この調製には加熱や超音波処理等は不要であり、短時間(4時間)で金属イオンが担体に捕捉された。 4-ブロモ安息香酸エチルを基質として、70%エタノール中100℃で2当量のアジ化ナトリウム(NaN3)を作用させたところ、12% Cu/CR11 (10 mol%)を触媒とした場合はアジド化が低収率(24%)ながら進行したのに対し、7% Cu/CR20ではアジド体の生成(29%)とともにアミノ体(7%)の副生が顕著であった。従って、芳香族アミノ化には7% Cu/CR20を、また芳香族アジド化には12% Cu/CR11を使用することとした。 7% Cu/CR20を触媒とする芳香族第一級アミン合成について、触媒量、溶媒の種類及び濃度等を精査した結果、N,N-ジメチルアセタミド(DMA)中、3当量のNaN3並びに等量(1当量)の触媒を使用するのが最適であることが明らかとなった。一方、芳香族アジド化合物合成には、80%エタノール中10 mol%の12% Cu/CR11及び15 mol%のN,N'-ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)存在下、2当量のNaN3を添加すると、4-ヨード安息香酸エチルから高選択的にアジド体が生成した(73%)。以上、芳香族ハロゲン化合物とNaN3から、芳香族第一級アミンと芳香族アジドをそれぞれ触媒依存的に合成する反応を確立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、固定化銅触媒(Cu/CR11及びCu/CR20)の調製方法、またこれら触媒を用いた、芳香族第一級アミンと芳香族アジドの触媒依存的な合成反応の最適化を達成した。また、芳香族第一級アミンと芳香族アジド合成におけるそれぞれの基質の違いによる反応性の傾向も掴んでおり、本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に確立した反応条件に基づいて、様々な芳香族ハロゲン化合物を基質として、芳香族第一級アミンと芳香族アジドのそれぞれの合成について基質適用範囲を明確にする。特に、芳香族臭素と芳香族ヨウ素化合物の芳香環の置換基の性質による影響を詳細に検討する。現時点では芳香族第一級アミン合成の場合、電子求引性基が、また芳香族アジド合成では電子供与性基が芳香環に置換した芳香族ハロゲン化合物が基質として優れている傾向が認められており、両反応が異なるメカニズムで進行している可能性がある。様々な官能基が芳香環に置換した芳香族ハロゲン化合物を基質として反応性を比較することで反応機構解明の手がかりを得る。また、ピリジンやピリミジンなどの複素環ハロゲン化合物にも適用し、アジド化及びアミノ化の適用範囲の拡大を試みる。さらに、クロスカップリングに対して一般に反応性が低い芳香族塩素化合物や水酸基にメタンスルホニル基が導入された芳香族ヒドロキシ化合物のアジド化及びアミノ化を検討する。これらの検討では、反応性向上を目的としてホスフィンリガンド等の添加効果も調べる。 本申請研究で扱うCu/CR11及びCu/CR20は不均一系銅触媒であり、反応後の単純なろ過により生成物からの銅イオンの除去が可能であるため、環境面に加えコスト面でも工業化の大きな利点となるものと期待される。したがって、反応後に触媒をろ別したのち、得られたろ液の銅濃度を測定することで反応中の担体からの銅の溶出の有無を調べる。仮に銅の溶出が検出された場合、ろ液にキレート樹脂を新たに添加することで銅の再吸着性を確認し除去法として確立する。また、回収した銅試薬の再利用は本反応の実用性の向上につながるため、少なくとも5回までの繰り返し利用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、5種類の反応について同時に、反応温度と撹拌数を系統的に検討することが可能な柴田科学製有機合成装置ケミストプラザを購入し、反応条件の最適化検討に使用した。平成25年度は、基質適用性に関する検討を重点的に実施するため、研究の効率性を考慮し平成24年度分の残額を平成25年度に移行し、平成25年度分予算と併せて、試薬や溶媒の購入に充てる。
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