研究課題/領域番号 |
24590017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
加藤 正 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (50382669)
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研究分担者 |
渡邉 一弘 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (10382673)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子標的治療薬 / 生物活性天然物 / 抗腫瘍活性物質 / 全合成 / TAN-1813 / HDAC阻害剤 / FK228 / スピルコスタチン |
研究概要 |
1) p21rasファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤 TAN-1813の全合成に関する研究 優れたRasファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤であるTAN-1813の完全化学合成を達成すると共に天然物の絶対立体配置を決定することを目的として行った。本年度はこれまでに得られたモデル実験の知見を基にデカリン環セグメントおよびマレイミドセグメントのカップリング反応について検討を行ったが、カップリング反応はまったく進行しなかった。そこで、合成計画を見直し、分子内Diels-Alder反応の前にスクシンイミドセグメントを導入することとした。その結果、中程度の収率でカップリング体を得ることに成功した。その後、酸化反応を行ったところ、酸化反応、続く分子内Diels-Alder反応が一挙に進行し、所望の立体配置を有する環化体を単一の立体異性体として得ることに成功した。 2) ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) 阻害剤 FK228の類縁体合成に関する研究 FK228(ロミデプシン)は、優れたヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) 阻害作用を示し、新しい分子標的抗がん剤のリード化合物として注目されている。我々はすでにFK228 の合成法を確立しているが、FK228の構造活性相関の解明および優れたHDAC classI選択的な阻害剤の創製を目的として類縁体合成を行った。FK228の2位を無置換とした類縁体および2位および5位を無置換とした類縁体を設計し、その合成を行った。その結果、2位を無置換とすることで椎名法によるマクロラクトン環化反応が進行し、効率的な類縁体合成が可能であることを見出した。また、2位を無置換とすることで、HDAC 阻害活性を損なうことなく、アイソフォーム選択性が向上することを見出した。一方で2位および5位を無置換とした類縁体では HDAC阻害活性が著しく低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TAN-1813の合成では当初の合成計画は不成功に終わったものの、スクシンイミドを合成の序盤に導入することで両セグメントの連結に成功している。また、セグメント連結後、分子内 Diels-Alder 反応が行ったところ、所望の立体配置を有する環化体を単一の立体異性体として得ることに成功した。また、FK228の類縁体合成においては 2位を無置換体とすることで FK228を上回るアイソフォーム選択性を有する類縁体の創製に成功しており、概ね当初の計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
TAN-1813 の合成ではこれまでに得られているデカリン環セグメントの修飾に関する知見を基に、今回得られた環化体の修飾を行っていく予定である。しかし、5位にスクシンイミド部を導入していることにより、立体的要因あるいは含窒素化合物という点から従来の方法論を応用するのにも限界があることが予想される。合成法の見直しを含め、反応条件を最適化していきたい。FK228の類縁体合成においては5位置換基およびその立体配置の影響について検討を行う。具体的にはイソブチル基あるいはベンジル基を有する類縁体についてそれぞれ S 配置および R 配置を有する類縁体を合成し、HDAC阻害活性を測定する予定ある。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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