研究課題/領域番号 |
24590019
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
廣瀬 友靖 北里大学, その他の研究科, 准教授 (00370156)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | MRSA / Naphtacemycin / 全合成 / デッツ反応 |
研究概要 |
MRSAは代表的な薬剤耐性菌であり、病院内での院内感染を中心にその蔓延は近年深刻な社会問題の一つとなっている。そして既存の抗菌薬に対して高度に耐性を示す耐性菌も出現していることから耐性菌の薬剤耐性機構を標的とする、新規抗MRSA治療薬の開発が急務とされている。北里生命科学研究所においてβ-ラクタム剤耐性機構を標的とした新規阻害剤の探索が行われ、その結果、Naphtacemycin類全17種が見出された。本研究ではそれらの全合成ルートを確立し、活性化合物群の安定供給法を確保すると共に、天然物より優れた化合物を創製することを目的としている。平成24年度はNaphtacemycinA9を標的にその全合成に着手した。NaphtacemycinA9は連続したA,B,C,D環とビアリール結合により連結したE環からなる化合物だがそれぞれ改変可能な合成戦略としてデッツ反応を利用した環構築とフリーデルクラフツタイプの環化反応を組み合わせた効率的な骨格構築法の検討をおこなった。 4-Bromoanisoleから調製した4-bromo-3-iodoanisoleとアリールホウ素酸との鈴木-宮浦反応を行うことで高収率でカップリング体を得た。続いてそのカップリング体にCrを導入することでCrカルベン錯体を中程度の収率で得たが、続くデッツ反応に問題があった。 そこで、モデル化合物を用いてデッツ反応の検討を行った。4-Bromoanisoleに対しCr化を行いCrカルベン錯体をよい収率で得た。得られたCr錯体に対しデッツ反応を行ったところ収率に改善の余地があるものの、望みのC環構築に成功した。現在、得られたデッツ反応体に対しA環の導入とのフリーデルクラフツ反応によるB環構築の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナフタセマイシン類の構造特徴としては4環性のテトラセン骨格(A-D環)にビアリール結合でE環部が連結し、D-E環部に軸不斉を持っている。更にB,C環を中心に面性不斉を示すことが強く示唆されている。また、テトラセン骨格は非芳香環部であるB環の両側に芳香環が配置されており、高度に酸素官能基化されている。創薬研究への展開において活性化合物の安定供給を考慮するとナフタセマイシン類に特徴的なテトラセン部分の柔軟性に富んだ骨格構築法が不可欠である。そのことからその基本骨格となるABCD環のうち、キー反応となるデッツ反応を利用しCD環構築に成功しているため、全合成ルートの確立においては、一つの大きな壁を乗り越えたといえる。 以上の結果より、本年度の達成感として「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は特異なテトラセン骨格を鈴木-宮浦反応及びデッツ反応の後、フリーデルクラフツ型環化に続く1,2-アルキル転位を経て一挙に構築する方法を検討する。この本年度では既に確立したCD環部構築法に続き、Naphtacemycinの全合成を達成するとともに、その全合成を不斉全合成へ発展させ絶対立体構造を決定したい。さらに耐性菌の耐性因子に対する阻害活性を評価し、天然物を超える誘導体を創製を目的にする。 すなわち特異なテトラセン骨格のD環部分からクロムカルベンを経由してアルキニルホウ素化合物とのデッツ反応によりC環部構築に成功しているため、次にC環部のアリールホウ素とA環部分のベンジルハライドとの鈴木-宮浦カップリングを行い、最後にフリーデルクラフツ型環化に続く1,2-アルキル転位後、酸化的な処理をすることで一挙に構築する方法を確立する。まず、このテトラセン骨格構築法の確立を検討し、多種多様な誘導体群の調製を可能していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を実施する研究室には合成実験に必要な設備、実験器具、化合物の同定に必要な各種解析機器(NMR, MS, IRなど)が備わっているが、一部設備に関しては老朽化のため買換が必要であり、交付金の一部を随時、設備品の購入に当てる。また、各種試薬、理化学器具に関しても購入していく。 本研究計画に沿って研究が遂行され、発表に値する成果がまとまったところで、論文発表、学会発表をおこないたい。その時の旅費として本交付金を使用する。
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