研究課題
今年度は、抗がん活性を示す天然物であるレベッカマイシン、ブロモレベッカマイシンの全合成及び、その類縁体の合成に注力した。レベッカマイシン、ブロモレベッカマイシンについては、すでに保護基を有する誘導体の合成まではルートが確立した。現在、保護基の効率的除去について検討を重ねている。これと並行して、レベッカマイシン類縁体の合成も行っている。すなわち、ペリ位のブロモ基を他のハロゲンやメチル基に変えた誘導体の合成も試みている。得られたレベッカマイシン類縁体は、グリコシル結合の立体化学によって、全体の立体構造が大きく異なることがわかった。特に、α-グリコシル結合の場合は、結合(sp2窒素―sp3炭素結合)の周囲が立体的にこみあった状態にあり、軸不斉異性体を含む様々な立体異性体が存在することがわかってきた。これらの立体構造については、X線結晶解析、NMR及びHPLCの検討によって明らかにしつつある。このような合成研究を行うにあたって、インドールのN-グリコシル化反応の開発が必要であった。インドールの窒素は求核性が低く、グリコシル化反応にあたっては、激しい条件を用いて行わざるを得ない。様々な条件を検討したが、現状では、強アルカリである水酸化ナトリウムを用いる方法が最も良い収率を与えることがわかっっている。しかし、このような激しい条件を用いるグリコシル化では、糖類の保護基に制限がかかってしまうため、あまり望ましくない。来年度は、中性条件下でグリコシル化を行うべく、光延反応の応用を検討したいと考えている。さらに、合成されたレベッカマイシン類縁体の生物活性を検討し、真の活性コンホメーションを明らかにしたいと思う。
2: おおむね順調に進展している
レベッカマイシン及びブロモレベッカマイシンの合成については、ほぼルートが確立された。また、グリコシル化反応についても、ある程度立体選択的に行える反応条件をみつけることができた。得られたレベッカマイシン類縁体の立体構造の解析も順調に進んでいる。レベッカマイシン類縁体の生物活性の検討について来年度は注力したい。
レベッカマイシン及びその類縁体の合成についてほぼ完成しているので、得られた様々な類縁体について立体構造の解析を進める。同時に、生物活性の検討も行い、活性コンホメーションをあきらかにし、より生物活性の高い新しい分子の設計及び合成に向かいたい。
生物活性の検討を来年度に行うことにしたため、ペプチドなどの高価な試薬類を翌年度に購入することになったため。購入予定である高価な試薬類を購入する。
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Organic Letters
巻: 16 ページ: 1514-1517
10.1021/ol500417t
Chemistry A European Journal
巻: 19 ページ: 7056-7063
10.1002/chem.201300064