研究課題
糖含有天然物の立体構造を明らかにし、生物活性との関連を調べることを目的として研究を遂行した。トポイソメラーゼ阻害作用を有する糖含有天然物であるレベッカマイシン類縁体の合成を検討した。グリコシル結合の形成反応については、これまでにも多くの方法が開発されているが、いずれも強酸性、もしくは強塩基性条件下で行われるものであり、中性条件下で進行する反応は少ない。本研究課題では、他の官能基に影響しないことを第一目的とし、温和な中性条件下で進行するグリコシル化反応を開発することとした。具体的には、光延反応をグリコシル結合形成に応用することとした。様々な条件を検討した結果、溶媒効果が大きいことを見出した。すなわち、溶媒の極性によって、グリコシル結合の立体化学の選択性が変わることを見いだした。これを利用して、レベッカマイシン誘導体について、αグリコシル結合体とβグリコシル結合体を選択性良く合成することができた。天然型のレベッカマイシンは糖がβグリコシル結合したものであるが、今回、αグリコシル結合した化合物が得られたことは、今後の生理活性の検討において非常に有益と考えている。特に、天然から得られて化学構造は確認されているものの、全合成例が未だに報告されていないブロモレベッカマイシン誘導体の合成に道筋をつけたことは高く評価されるものと考える。得られた様々な誘導体の立体構造をVTNMRによって調べた結果、グリコシル結合の立体化学に関わりなく、おしなべて糖部位がインドロカルバゾールの極めて近傍にある、いわゆるclosedなコンホメーションが優先されていることがわかった。この結果は、糖とインドロカルバゾールを結ぶグリコシル結合が非常に立体的にこみあった環境下に置かれていることを示唆するものである。
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Organic Letters
巻: 16 ページ: 1514-1517
10.1021/ol500417t