研究課題/領域番号 |
24590021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
橘高 敦史 帝京大学, 薬学部, 教授 (00214833)
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研究分担者 |
高野 真史 帝京大学, 薬学部, 助教 (50386611)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬学 / 有機化学 / ビタミンD / ビタミンD受容体 / タキステロール / 骨粗鬆症治療薬 / 生理活性 / 合成化学 |
研究概要 |
空気中室温で不安定な特有のトリエン構造のため、研究対象として困難なビタミンDの光異性化体「タキステロール」について、同条件下でも取扱い容易な新規トリエン骨格14-エピ-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルタキステロール(1)を見出した。ヒトビタミンD受容体(hVDR)とのX線共結晶構造解析より、活性型ビタミンD3とは異なる結合様式を認めた(Sawadaら、J. Am. Chem. Soc., 2011)。hVDRのリガンド結合領域に柔軟性がある結果であり、本研究課題では、この新規化合物1について、14-エピ-1α,25-ジヒドロキシタキステロール(2)の誘導体を含め、効率良く合成する方法を開発し、活性型ビタミンD3よりも強い骨形成作用を有する誘導体(骨粗鬆症治療薬)を取得する目的で取組んだ。 まず、2位に置換基を有する1の誘導体合成では、活性型ビタミンD3ではhVDR結合親和性を強化した置換基が、本タキステロールでは結合減弱に寄与してしまい、これはhVDRへの結合様式の違いからくるものと分子モデリングで考察した。 次いで19位のメチル基を保存した化合物2の合成に着手し、トリエン部の構造、安定性、hVDR結合様式および生物活性を探ることとした。A環部はシキミ酸からジアゾメタンを用いる炭素-炭素結合形成を鍵反応として19位メチル基を導入し、更にアルデヒドの増炭反応で7位炭素をエンイン構造で構築した。CD環部とのStilleカップリングを行い、目的とする化合物2を合成することができた。新規化合物2のhVDR結合親和性は、対応する19-ノル体よりも低い値を示した。 以上のように、新規化合物2では、19位のメチル基をもたない1の方が受容体結合能が高く、さらに2位置換基の導入は、活性型ビタミンD3では活性向上に有効であっても、1では不利に働くものがあることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々が見出した安定な新規タキステロール誘導体である14-エピ-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルタキステロール(1)への2位置換基の導入を行った。すなわち、活性型ビタミンD3では活性向上に有効であった2α-(3-ヒドロキシプロピル)基、その対照となる2β-(3-ヒドロキシプロピル)基および2α-(3-ヒドロキシプロポキシ)基の導入を計画通り進めることが出来た。また、ヒトビタミンD受容体への結合親和性評価とオステオカルシン転写活性評価も本年度内に終了することが出来た。 更に、14-エピ-1α,25-ジヒドロキシタキステロール(2)の合成研究は、当初平成25年度の研究計画であったが、24年度中に新規ルートを開拓し、前倒しで合成を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
19位に本来のメチル基を有する14-エピ-1α,25-ジヒドロキシタキステロール(2)の合成法を開発出来たので、19-ノル体(1)および活性型ビタミンD3と生物活性を比較する。A環部については、シクロヘキセン誘導体に対するジアゾメタンの1,3-双極子付加環化と続くピラゾリンの熱分解反応が成功し、同様のルートで2位置換体を合成できる。CD環部とのStilleカップリングのため、ビニルスズ化合物へと導く。hVDRのリガンド結合領域の柔軟性を活かし、活性型ビタミンD3とは異なるs-trans配置で結合する一連の14-エピ-タキステロール類を合成し、CYP24A1に対する代謝安定性、更に骨粗鬆症モデルOVXマウスを用いて骨密度改善と骨形成に対する効果を調べ、in vivoデータを取得する。また、hVDR-新規誘導体複合体のX線共結晶構造解析を行い、結合様式と生理活性発現機構を精査する。 また、制癌作用についても海外研究協力者とともに調べていく。(これまでの制癌活性に関する関連共同研究成果:①Chiangら、Steroids 2011, 76, 1513; ②Iglesias-Gatoら、J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 2011, 127, 269; ③Chiangら、Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine 2012, Vol. 2012, ID 310872, doi: 10.1155/2012/310872など)。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該助成金は、所属する大学キャンパスの移転(相模湖キャンパス→板橋キャンパス)に伴い、必要な消耗品の一部を大学からの研究費で一括購入したことにより、助成金の年度内に使用する予定部分を節約できたことによるものである。 次年度の研究費の使用計画の詳細は、次のようである。 消耗品(金額単位:千円)有機溶媒 500、試薬 500、シリカゲル 200、TLCプレー 200 国内旅費(金額単位:千円)研究打合せ旅費 50、成果発表 150 謝金(金額単位:千円)外国語論文の校閲 50 その他(金額単位:千円)印刷費 320、研究成果投稿料 200、ガラス器具修理 100
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