研究課題/領域番号 |
24590024
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
一柳 幸生 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (80218726)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ペプチド / アルカロイド / 構造決定 / 配座解析 / 抗腫瘍活性 / 細胞毒性 / アナログ |
研究概要 |
≪18員環の配座構造を固定したアナログの合成、細胞毒性活性試験と配座解析≫ 18員環の配座構造の固定は、残基1,4間をアルキル鎖で架橋することにより行った。市販のL-アリルグリシン(allylGly)のN末側にペプチド鎖を伸長し、Boc-allylGly-Ala-N,O-diMe-Tyr-allylGly-OHを得た。アカネ根より単離精製して得たRA-VIIの減成反応により供給されるシクロイソジチロシンと結合後、マクロ環化反応により[allylGly-2,allylGly-4]RA-VIIを得た。分子内オレフィンメタセシス反応による環化後二重結合を還元して、残基1,4間をトリメチレン基で架橋したアナログを合成した。MTT法によりP388マウス白血病細胞、HL-60ヒト骨髄性白血病細胞等に対する毒性を評価したところ、天然のRA-VIIに比べて活性は大きく低下していた。二次元NMRスペクトルによる解析を行ったところ、本アナログは予想に反してRA-VIIとシクロイソジチロシン部位の配座構造が大きく異なることが示唆された。 ≪天然有機化合物ライブラリーの構築≫ ライブラリー構築のため、Rubia cordifoliaおよびStemona tuberosaの根より得たメタノールエキスの分離精製を行い、前者から4種の新規ペプチドを、後者から7種の新規アルカロイドを得た。これらの化合物の構造は、機器スペクトル解析、X線結晶解析および化学的手法により決定した。また、一部のアルカロイドの絶対配置については、今年度購入した旋光度検出器を用いたHPLC法により、既知化合物との化学的関連付けを達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配座構造を固定したアナログについては、一部の行程の化学収率に問題を残すものの、予定通りに合成を行うことができた。本化合物について精密な配座解析に必要なX線結晶解析を行うべく種々の溶媒より結晶化を試みたが、良好な結晶を得るには至っていない。しかし、本アナログはピークの分離が良好なため、NMRスペクトルによる詳細な配座構造解析が可能と考えられる。 一方、天然有機化合物ライブラリーの構築においては、11種の新規化合物を得ることができた。これらのうち、アルカロイド成分には、これまでに報告のない特異な骨格構造を有するものが含まれている。
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今後の研究の推進方策 |
NMRスペクトルの情報をもとに、合成した配座構造を固定したRA-VIIアナログの分子モデリングを行い、RA-VIIとの比較を行う。 また、RA-VIIの立体構造を維持したまま水溶性を改善するために、シクロイソジチロシンのエーテル酸素原子を窒素原子に置き換えたアナログを合成する。このアナログは構造中に塩基性窒素原子を有するため、生理学的に許容しうる酸化合物と水溶性の塩を形成できると考えられる。また、窒素原子は酸素原子と同様に芳香環の電子密度を上昇させるため電子的にもほぼ等価の置換修飾と考えられるが、窒素原子は酸素原子に比べてより電子供与性が強いため、芳香環の電子密度の増強が細胞毒性活性に及ぼす影響を検証すためのモデル化合物となる。市販の4-ニトロ-L-フェニルアラニンより4-アミノフェニルアラニン誘導体へ変換し、ボロン酸基を有するチロシン誘導体とジペプチドを形成したのち、申請者らが開発したシクロイソジチロシン合成法を適応することにより、分子内ジフェニルアミノ化を行い、アザシクロイソジチロシンへ誘導する。これに別途合成した残基1-4に相当するテトラペプチドを縮合し、マクロ環化反応によりTyr-5、Tyr-6残基間の芳香環がアミノ基で結合したRA-VIIアナログを合成する。NMRスペクトルより得られる情報を活用し、分子モデリングによりRA-VIIとの三次元構造上の相違点を検証する。良好な結晶を与えた場合は、単結晶X線解析により結晶中の配座構造を明らかにする。P388マウス白血病細胞、HL-60ヒト骨髄性白血病細胞等に対する毒性を評価する。 一方、天然有機化合物ライブラリー構築のための植物素材の収集、および種々の材料より化合物の単離精製・構造決定を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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