研究課題/領域番号 |
24590031
|
研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
高波 利克 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (40241111)
|
キーワード | 一電子移動 / 有機触媒 / 芳香族第三アミン / 不斉触媒 / 陽極酸化 / 光電子移動 / ポルフィリン / 光増感剤 |
研究概要 |
本研究は、陽極酸化反応において基質の一電子移動過程を媒介することが知られている芳香族第三級アミンなどにキラルなビアリール構造等を導入することにより「一電子移動型不斉有機触媒」を開発することを主な目的として実施するものである。この目的を達成するためには、「一電子移動型不斉有機触媒」の適切な分子設計に加え、電気化学的手法以外の電子移動ツールについても検討する必要がある。そこで、一昨年に続き、不斉芳香族第三級ビアリールアミンの構築、特に、スピロ構造により剛直化された軸不斉をもつ不斉芳香族第三級アミンの構築とその「一電子移動型不斉有機触媒」としての可能性を検討した。また、電気化学的以外の電子移動ツールとしてIr(bpy)3などの可視光型光増感剤を用いた光電子移動の可能性について検討した。これらの結果から、以下の新規な知見を得た。1.スピロ構造により剛直化された不斉ビアリール型芳香族第三級アミンを「一電子移動不斉有機触媒」として用い、ベンジルエーテル誘導体の陽極酸化を行った結果、30%ee程度の不斉を誘起できることを見出した。2. Ir(bpy)3などの可視光型光増感剤を電子移動ツールとして用いて、アルコールの酸化反応を検討した結果、この光化学反応系に芳香族第三級アミンを添加すると、高効率で対応するカルボニル化合物へ変換できることを見出し、芳香族第三級アミンが光電子移動反応においても一電子移動過程を媒介できることが明らかとなった。 また、関連の事項として、光増感剤の基盤分子としての有用性が期待されるC6F5基などフッ素基を持つポルフィリン誘導体の高効率合成法についても検討し、Pd触媒存在下ハロゲン化ポルフィリンとビス(ポリフルオロフェニル)亜鉛反応剤とのカップリング反応を行うことにより目的のフッ素官能基をもつポルフィリンが短時間かつ高収率で得られることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンが一電子移動を経由する不斉有機触媒として利用できることを見出し、「一電子移動型不斉有機触媒」という新概念確立の端緒を得た。また、関連事項として、ポルフィリンの高効率フッ素官能基導入反応を開発した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の項で述べたように、本研究で提案する「一電子移動型不斉有機触媒」がビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンを利用することで実現可能であることが判った。特に、ビアリール部分の剛直性を増大した不斉スピロ型芳香族第三級アミンを「一電子移動型不斉有機触媒」として用いると、不斉収率を向上できる可能性を見出した。そこで、今年度は不斉スピロ型芳香族第三級アミンへのフッ素官能基などの導入を行い、電気化学的な安定性と適度な酸化力を併せ持つより実用的な一電子移動型不斉有機触媒反応を開発する。また、昨年度は、芳香族第三級アミンがIr(bpy)3などの可視光型光増感剤を用いた光化学的一電子移動反応においてもメディエーターとして働き得ることを明らかにした。この方法は、電解装置などの特殊な装置を用いる必要がなく、多くの有機合成化学者にも利用しやすいという特徴を持つだけではなく、電解法とは異なり、芳香族第三級アミンの二量化が起りにくいという興味深い反応性を示すため、Ir(bpy)3以外の可視光型光増感剤についてさらに検討を加え、より実用的な一電子移動型不斉有機触媒反応を開発する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
受入れ利息が生じたため。 次年度の物品費に組み込み、当初の予定通り、平成26年度研究計画を遂行する。
|