研究実績の概要 |
アセトゲニン類は炭素鎖32および34の脂肪酸の2位にC―3ユニットが結合子γ―ラクトン環を形成した基本骨格を有するバンレイシ科植物由来の天然化合物群であり、がん細胞に対して著しく強力な殺細胞毒性活性を示す。その構造的特徴は脂肪酸長鎖上の炭素が多様に酸化され、不斉水酸基とともにTHF環構造を有する。しかしながらその構造は規則性に乏しく、長鎖炭素鎖に由来する自由度の高いフレキシブルなコンフォーメーションにあるため確かな構造活性相関を議論出来るには至っていない。Goniocinはアセトゲニン類の中でTHF環が3つトランスに連続して2,5-trans結合した構造を有しているが、この環構造が分子のコンフォーメーションを規制することから、本研究ではこれら(+)-goniocinおよび同じくtris-THF環構造を有する(+)-cyclogoniodenin-Tの不斉全合成に取り組んだ。 その結果、次の成果を得ることができた。 1. これらの全合成にあたっては、THF環の立体化学の制御が必要があるが、連続したTHF環には、2,5-cis, 2,5-transの立体異性体に加えてTHF環どおしがerythro, threoの関係にある複雑な異性体が存在する。この構築にあたっては、アルケン部位からi; オゾン酸化, ii; ブテニル化, iii; 交差メタセシス, iv; PdCl2触媒による立体特異的環化反応の4段階反応で、一つずつTHF環を立体制御しながら増環できる方法論を確立出来た。 2. (+)-Goniocinおよび同じくtris-THF環構造を有する(+)-cyclogoniodenin-Tの全合成をそれぞれS-グリシドールおよびR―グリシドールから18段階で合成することが出来た。そして、ともにユビキノン酸化還元酵素をナノレベルで阻害することを明らかにした。
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