研究課題/領域番号 |
24590037
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
森川 敏生 近畿大学, 薬学総合研究所, 准教授 (10340449)
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キーワード | タイ天然薬物 / メタボリックシンドローム予防 / 中性脂肪蓄積抑制活性 / 中性脂肪代謝促進活性 / Camellia sinensis / Nigella sativa / Salacia chinensis |
研究概要 |
本研究は,熱帯から亜熱帯に位置し薬用資源の世界的に豊富なタイ地域の薬用植物資源のうち,タイ伝統医薬学に用いられ,かつ,食経験があるなど安全性が確立している素材について厳選し,メタボリックシンドロームに対する予防効果を有する新規医薬シーズの探索研究を目的とする. とりわけ,糖尿病や肥満,脂質異常症などの生活習慣病あるいは肥満に伴う内臓脂肪の蓄積によって肥大化した脂肪組織から過剰に分泌される各種炎症性サイトカインなどに起因した炎症性疾患などの予防および治療薬シーズについての探索研究を実施するものである. 平成25年度は,我々が独自に構築したアッセイ系であるヒト肝がん由来HepG2細胞を用いた中性脂肪蓄積抑制活性,あるいは,中性脂肪代謝促進活性が認められた2種の食用素材,茶花(Camellia sinensis, flower buds)およびニゲラ(Nigella sativa, seed)から,新規な活性寄与成分を見いだした. 加えて,タイ天然薬物のSalacia chinensisに含有される顕著なα-グルコシダーゼ阻害活性を有するsalacinol類のin silicoデザインを駆使したアナログ合成および構造活性相関研究による医薬候補物質の創出をめざした研究を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,タイ地域において食経験があるなど安全性が確立している天然資源より調製した抽出エキスライブラリーについて,メタボリックシンドロームの予防および治療薬シーズ探索に有用な各種in vivoおよびin vitro活性評価試験を指標に厳選し,作用の認められた有望素材についてその含有成分を探索するものである. 加えて,見いだした活性寄与成分について活性発現の必須構造や構造活性相関を明らかにする目的で,誘導体合成および関連化合物との作用比較などを実施するとともに,顕著な活性を示す化合物についてタンパクレベルおよび遺伝子レベルでの作用メカニズム解析を実施し,新たな医薬候補物質の開拓をめざしている. 平成25年度は,2種の有望素材からのシーズ探索を肝細胞への中性脂肪の蓄積抑制,あるいは代謝促進活性を有する新規化合物を単離,構造決定するととに,salacinol類をシーズとした医薬候補物質の創出研究を実施するなど,おおむね当初の計画どおり順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は,これまでに実施した抽出エキスライブラリーのスクリーニング試験により見いだした候補素材について,生物活性を指標に活性寄与成分の探索研究を継続して実施するとともに,ピックアップされた活性寄与成分について,各種類縁体合成を実施し活性発現の必須構造や構造活性相関研究へと繋げ,医薬候補物質としての提案ができるべく検討を重ねる. また,顕著な活性が認められた化合物について,in vivoでの生物活性評価試験を詳細に実施するとともに,その作用メカニズム解析を発現タンパクレベル(ウエスタンブロット法など)および遺伝子レベル(RT-PCRおよびマイクロアレイなど)で実施する. これらの研究成果により得られたノウハウを駆使し,生物活性評価と類縁体合成のクロストークによる迅速な構造活性相関解明およびその作用メカニズム解析を実施し,新たな医薬候補物質の提案に繋げたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究において直接経費は専ら試薬などの物品購入にあてており,今年度の執行において若干の余剰が生じたためで,研究遂行上に何ら変更はない. 研究計画に変更はなく,次年度予算とあわせ物品購入に使用する予定である.
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