研究概要 |
イナミドは電子豊富なアルキンとしてその特異な反応に近年注目が集まっているが、イナミドを基質とする求電子的環化反応についてはあまり報告例がない。今回私は、環境への負荷が低いヨウ素試薬を用いたイナミドの求電子的環化反応について系統的に精査し、一般的な複素環合成法として確立することを目的として研究に着手した。 環化前駆体であるイナミド類は文献既知の手法により合成可能であることを確認した。通常のアルキンとイナミドとではどのような反応性の違いが見られるのかについて、当研究室で見出したベンゾフラン合成法(Org. Lett. 2008, 10, 4967.)をモデルとして比較検討した結果、通常のアルキンを基質とした場合では反応の完結に24時間要していたにも拘らず、イナミドに置き換えることで3秒以内に反応が終結し高収率で目的のベンゾフランが得られることを見出した(日本薬学会第133年会、28amA-621S)。 またヒドラジドを求核種とするヨード環化反応を別のモデル反応とした場合においては、通常のアルキンを基質とすると5員環形成は可能であるが(Org. Lett. 2010, 12, 3506.)6員環構築には不向きであったのに対し、イナミドに置き換えることにより6員環であるピリダジン類の構築が可能となることを明らかとした。以上の知見はイナミドの高反応性を支持する結果として捉えることができる。 さらにイナミドの特長として、アミド部に不斉補助基を導入できる利点がある。そこで光学活性イナミドを基質として、我々が見出したスピロ環合成法(Synlett 2010, 203.)を実施した結果、所望のスピロ化合物が単一のジアステレオマーとして得られることを見出した(第62回日本薬学会近畿支部総会・大会、有-P-AM-08)。
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