研究概要 |
電位依存性イオンチャネルは、膜内外の電位差 (膜電位)に応じてイオン透過路を開閉し、特定のイオンの膜透過を制御する蛋白質である。これまでに、膜電位の存在していない活性化状態での立体構造が報告されているが、従来の構造生物学的手法では膜電位存在下での解析が困難であるため、静止状態の立体構造が不明であり、その電位依存的な動作機構は未解明であった。 一方、電位依存性H+チャネルVSOP は膜電位が+20~30mV 程度まで上がらないと活性化せず、膜電位非存在下では静止状態をとる。そこで、静止状態のVSD の代表としてVSOP の立体構造を明らかにすることとした。 今年度は、高分子量タンパク質においても高感度・高分解能でNMRスペクトルの観測が可能なIleδ 位, Leu, Val のメチル基の1H-13C 相関スペクトルのNMR シグナルを帰属することとした。VSOP にはIleδ 位, Leu, Val のメチル基が100 個存在し、それらは蛋白質の構造全体に分布しているため、これらメチル基のNMR シグナルは、構造変化検出の良いプローブとなる。 帰属は、主にIle, Leu, Valの各残基に変異を導入した蛋白質のNMRスペクトルと野生型のスペクトルとの比較により行った。これまでに70個のメチル基シグナルの帰属を確立し、予備的なメチル基間のNOEの解析から、VSOPが静止状態の構造をとっていることが示唆された。 また、電位依存性K+チャネルKvAPの電位センサードメイン(VSD)およびVSOPをリポソームおよびrHDLに再構成する技術を確立した。rHDLに再構成した条件では、NMRスペクトルの観測にも成功した。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費として、1640千円を使用する予定である。本研究では分子全体を2H 標識した上でIle, Leu, Val のメチル基選択的に1H, 13C 標識を施したタンパク質を大腸菌などで大量に調製するために、標識化合物(2H2O、α-ketoisovaleric acid (3-methyl-13C,3,4,4,4-D4))α-ketobutyric acid (methyl-13C, 3,3-D2)に多大な経費が見込まれる。特に、H25に行うNMR シグナルの帰属には、Ile, Leu, Val のいずれかを他のアミノ酸残基に置換した変異体のNMR試料を調製する必要があり、これらの試薬が大量に必要である。また、精製には界面活性剤decyl-maltoside(DM)を、また、rHDL の調製にはPOPE を始めとするリン脂質を大量に必要とする。 消耗品費 積算根拠 2H2O 70 千円/リットル 6 リットル 計420 千円、2H-glucose 50 千円/グラム 6 グラム 計300 千円、α-ketoisovaleric acid (3-methyl-13C, 3,4,4,4-D4) 600 千円/グラム 0.25 グラム 計150 千円、α-ketobutyric acid (methyl-13C, 3,3-D2) 600 千円/グラム 0.25 グラム 計150 千円、Decyl maltoside 12 千円/グラム 10 グラム 計120 千円、リン脂質 (POPE, POPG, DOTAP, etc) 150 千円/グラム 2 グラム 計300 千円 生化学実験器具 計100 千円、生化学実験試薬 計100 千円 合計1,640 千円
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